孤立主義、米の焦燥TPPに求心力/報復招く輸入制限 2018/3/10 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「孤立主義、米の焦燥TPPに求心力/報復招く輸入制限」です。





 米国を除く環太平洋経済連携協定(TPP)加盟11カ国が9日、新協定「TPP11」に署名した。規模が縮小したとはいえ世界の貿易総額の約15%をカバーする巨大自由貿易圏(総合2面きょうのことば)。関税下げと交易拡大に乗り遅れまいとアジアや中南米の国々も関心を示し、発効前から意外なほど求心力は強い。(関連記事総合4面に)

 くしくも同じ日に鉄鋼・アルミの輸入制限発動を正式発表したトランプ米大統領。TPPに背を向けたことで通商の面では大きな機会損失を被る恐れがあり、自由貿易か保護主義かの選択を改めて問われることになる。

 「TPP11署名は実にタイムリー。保護主義の圧力が現にあるからだ」(チリのムニョス外相)

 「保護主義と戦う。多くの国が新たに加盟するだろう」(ベトナムのアイン商工相)

 TPP署名後の共同会見で各国代表はトランプ政権による輸入制限を次々と批判した。

 現時点でTPPに関心を持つ国・地域は最低でも7つある。アジアでは韓国、タイ、インドネシア、フィリピン、台湾。中南米ではコロンビア、そして欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国。共通するのはトランプ流重商主義への反発と、通商で出遅れることへの焦りだ。

対中・対米戦略に

 米の輸入制限が自国の鉄鋼産業を直撃する恐れが強い韓国。米韓自由貿易協定(FTA)再交渉の防波堤も必要で「国益を守るため、TPPへの加入準備を進めることが必要」(朝鮮日報電子版)との論調が広がる。

 フィリピンはTPP加盟国で、EUとのFTAも締結したベトナムに劣後することへの焦りが濃い。南シナ海問題で中国と対立を抱えるインドネシアもオリジナル版TPPの大筋合意後にいちはやくジョコ大統領が加盟希望を出した。

 じつは新規加盟の筆頭候補は中南米の自由貿易圏「太平洋同盟」に参加するコロンビアだ。同国以外の太平洋同盟国はTPP11の加盟国で、農産品などの関税下げで同盟仲間に先を越される。

復帰働きかけ

 そしてどこよりも焦燥が濃いのは米国自身だ。「TPPは必ず米国の経済成長に資する」。2月、米上院の重鎮議員、ハッチ財政委員長ら20人以上の上院議員がトランプ氏あてにTPP復帰を求める書簡を出した。

 コメや豚肉、小麦……。自由貿易圏で米抜きの関税引き下げが進めば、得べかりし利益を取り逃がすのはTPPを強く支持してきたこれらの米業界だ。いずれの有力産地も共和保守派の大票田に重なるところも多い。

 乳製品でも、酪農大国のオーストラリアやニュージーランド(NZ)からのチーズやバターなどが日本の店頭に多く並びそうだ。豪州と米国産が大半を占める牛肉でも、NZ産やカナダ産など選択肢が増える。離脱した米国産はこうした農産物でシェアを落としかねない。

 一方で今回発動する鉄鋼・アルミ制裁の副作用は大きそうだ。米国の鋼板価格は既に世界平均より2~3割も高い。民間試算では輸入制限で鉄鋼産業は3万人雇用が増えるが、建設や自動車など周辺産業は業績悪化で雇用が減少。全米就業者は差し引き14万6千人減るという。

 「どの国が我々に公正に接するか見てみようじゃないか」。8日、こうまくし立てたトランプ氏の貿易交渉には報復合戦を招きかねない危うさがある。「米国第一主義」の代償で自国の利益と雇用を失うとすれば、これ以上、皮肉な結末はない。

(サンティアゴ=八十島綾平、ワシントン=河浪武史)



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