安倍1強3分の2の死角(下)市場が問う改革の決意 2017/10/25 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「安倍1強3分の2の死角(下)市場が問う改革の決意」です。





 株式市場が活況に沸いている。日経平均株価は衆院解散の流れが固まった9月半ば以降、1割弱上昇。好調な企業業績とアベノミクス継続への安心感から「年末に向けて2万3000円を目指す動きになる」(大和証券グループ本社の中田誠司社長)と強気の声はあちこちで聞かれる。

 安倍政権下で円高や高い法人税率など企業を取り巻く「6重苦」は様変わりした。景気回復で企業収益は過去最高に達し、失業率は3%を下回るほぼ完全雇用の状態だ。

 それでも物価は2%に届かず、政府はいまだにデフレ脱却宣言をできていない。選挙戦では企業が利益をため込み、設備投資や賃上げに回さないとの批判が出た。だが、経済の実力である潜在成長率が1%近辺と先進国でも最低水準に沈み、成長の道筋を描きにくいのが本質的な問題だ。

 いまこそデフレ慣れした停滞感を吹き払う一手を繰り出すときだ。人工知能(AI)や電気自動車(EV)、ロボット、ドローンなどの次世代技術は世界規模の大競争時代を迎えた。家計簿アプリなどを手掛けるマネーフォワードの辻庸介社長は「高い成長が見込める分野の規制を大胆に緩和し、成功事例をつくることが大事だ」と話す。

 岩盤規制に穴を開けるには法規制を凍結して実験に取り組みやすくする英国やシンガポールの「サンドボックス」などが参考になる。雇用規制緩和で成長分野への人材シフトを促すなどして、新しいビジネスが生まれる期待感を醸成できるかが改革の成否につながる。

 アベノミクス再起動への期待には危うさもある。株高や円安をもたらした大規模な金融緩和は本来、構造改革のショックを和らげる「痛み止め」だったはず。日銀が株や国債を買い支えるぬるま湯効果で与党も危機感が薄れているのではないか。

 UBSウェルス・マネジメントは選挙結果を受けて「安倍政権は経済改革より憲法改正に集中するだろう」と指摘。グローバルで日本株の投資判断をニュートラル(中立)に据え置いた。中長期の成長力を高めないと期待を裏切られた投資マネーは日本を去るだろう。

 今後数年は20年の東京五輪後の景気の落ち込みや、22~25年の団塊の世代の後期高齢者入りが迫る。首相はこれまで消費増税を2回延期し、今度は増税で得られる税収を教育無償化に使うという。持続可能な社会保障という財政の核心の難題に真正面から向き合う姿勢はうかがえない。

 この10年で国の税収は4兆円増える一方、社会保障費は11兆円膨らんだ。税収増は安倍政権より前に決まっていた消費増税の効果が大きく、ここへきて頭打ちだ。成長や増税に加え、一定以上の所得がある高齢者の負担引き上げなど歳出抑制策をセットで進めないと、制度が立ちゆかない。

 安倍政権は13年の参院選後、しばらく選挙がなく政権運営に注力できる「黄金の3年間」を手に入れたと言われた。振り返れば、腕力が要る規制緩和や税制の抜本改革は道半ばだ。首相が選挙中に何度も言及した「子どもたちの未来」を思い浮かべると、いまの日本に無為な時間を過ごす余裕はない。

(経済部 木原雄士)



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