就職前にワーキングホリデー 異国で働き成長実感 2016/12/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のキャリアアップ面にある「就職前にワーキングホリデー 異国で働き成長実感 」です。





 海外で働きながら勉強できる「ワーキングホリデー制度」は、ビジネスパーソンがいったん休職して利用するというのが一般的だった。しかし最近では、就職前の学生の利用が増えているという。海外で勉強するだけなら「留学」でいいわけだが、社会に出る前に、あえて異国の地で働きながら学ぶことを選んだ学生は、何を得て帰国したのか。経験者に聞いた。

■豪での苦労、自信生む

河野さん(中央)はリンゴ農園で働いた(豪ドニーブルック)

 ▼河野文也さん(23)関西大学人間健康学部4年生

 大学2年生の9月から1年間休学し、オーストラリアに滞在した。1年次は、出身の宮崎県都農町から大阪に出てきて、田舎と違う刺激がたくさんあり楽しかった。しかし、2年生になる春休みに「何しに大学に入ったのか」と行き詰まり、ふと「海外に行ってみよう」と思い立った。その翌日には日本ワーキング・ホリデー協会の大阪オフィスを訪れた。

 実は、姉がかつてワーキングホリデーを利用していたので、制度を身近に感じてはいた。しかし、英語が大の苦手で海外渡航も初めて。英語の勉強を大してせずに向かったところ、入国管理の質問が全く聞き取れず、すべて“Yes”と答えてしまった。

 オーストラリアでの最初の2カ月はメルボルンの語学学校に通い、その後は仕事を探すために履歴書を50枚ほど書いたが語学力の問題で不採用が続き、やっと日本食レストランで職を得た。しかし、仕事は日本人と一緒に地下室でラーメンを作ること。「これは違う」とすぐに辞めたが、資金は底をついてしまった。世間はクリスマスにわく12月だった。

 幸い現地の知り合いの紹介で、西部のパースの南方にあるドニーブルックのリンゴ農園で働くことができた。時給は20ドルと高く、貯金が40万円ほどできたので、市街地のパースでの生活を経験した後、最後の2カ月間はフィリピンに渡り、改めて語学学校に入った。

 渡航前は、社会人の先輩らが異口同音に「学生の時は良かった」と言うので、働くことに抵抗があったが、いまは社会に出るのが楽しみだ。本気でやれば何とかなるという自信もついた。オーストラリアでたくさんの人に助けてもらった経験から、いずれは「人とのつながり」を柱としたビジネスを立ち上げたい。

(談)

■ホテルで英語鍛える

 ▼折田将信さん(23)山口大学教育学部4年生

折田さん(右)は、ためたお金で豪州を旅した(フェイスブックから)

 将来の夢は、高校の英語教師になることだ。コミュニケーション重視の英語教育を目指す上で、日本での学習には限界があると感じ、大学3年前期が終わった時に留学を決意した。大学の交換留学という手段もあったが、自由にプランを立てることのできる私費留学のほうが魅力的だった。

 まずは語学学校で英語力を鍛え、それを生かした形でネーティブのいる環境で働き効率的に英語力を上げるという計画を立てた。ワーキングホリデーで学校に通うことができる期間はオーストラリアでは4カ月と決められている。英語はそんな短時間で身に付くものではないと判断して、最初に学生ビザでシドニーの語学学校に入り、10カ月間学んだ。英語を母語としない人が対象の英語教授法「TESOL」を学べたことも、教師を目指す上で有意義だった。

 ワーキングホリデーのビザに切り替えてからは、ケアンズに近い高級リゾート地のハミルトン島のホテルで、完全に英語だけの環境下で約5カ月間働いた。

 主にキッチンが職場だったが、慣れてからは日本からの観光客の通訳を任されるようになった。精神的にしんどい面もあったが、あのつらい日々を乗り越えたことが、自分自身の成長につながっていると確信できる。

 渡航前は600点程度だった英語能力テスト「TOEIC」のスコアが今は890点まで伸びた。また、オーストラリアでの生活を通して、異国文化の理解もできた。英語教師になる夢に一歩近づけた気持ちだ。

(談)

■若者向けに交流カフェ

 日本ワーキング・ホリデー協会(東京・新宿)の池口洲理事長によると、学生の利用が増えたのは2011年の東日本大震災の後からだという。

ワーキングホリデー・コネクションには外国人も働いている

 かつては学生に限らず「『海外で英語ができるようになればいいな』とふわっとした人が多かった」と池口氏。一方、最近は「いつ何が起きるかわからない。時間が自由になる学生のうちに、英語力をスキルとして身につけておきたい」と、特に学生は目的意識がはっきりしている。内定から入社までの時期を利用する大学生も増えている。

 同協会は「海外に興味を持つ若者の交流の場」として7月に、東京・原宿にカフェ「ワーキングホリデー・コネクション」を開いた。店長やスタッフの多くはワーキングホリデー経験者。制度で来日して働いている外国人もいる中で、気軽に相談ができる体制だ。

(編集委員 木村恭子)

 ▼ワーキングホリデー制度 日本政府が協定を結んだ国や地域間で観光や勉強だけでなく、就労も可能なビザを利用できる制度。18歳から30歳まで申請でき、原則1年間。同じ場所には一度しか行けない。 日本は1980年にオーストラリアと協定を結び、以後、ニュージーランド、カナダ、韓国、フランス、ドイツ、英国、アイルランド、デンマーク、台湾、香港、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、オーストリアと続き、現在では16カ国・地域。 ビザ取得にあたり、語学力の基準が不問であったり、滞在先で働くことができるため、初期費用が少なくすむのが特徴。日本からは年間で約2万人が利用し、渡航先は時給が高いオーストラリアが最も多く、約1万人に上る。相手国・地域から日本を訪れる若者は約1万人。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です