展望2017(5) 「賃上げは利益に」共有を 大阪大教 授大竹文雄氏 2016/12/31 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「展望2017(5) 「賃上げは利益に」共有を 大阪大教授大竹文雄氏」です。





 ――反グローバル化のうねりが出ています。

大竹文雄・大阪大教授

 「英国の欧州連合(EU)離脱決定やトランプ氏の当選は、所得の二極化が背景にある。トップ層はいつまでも金持ちなのに、中産階級より下はどんどん所得が下がっている。昔はアメリカンドリームで成功するチャンスがあったが、今は少なくなっている」

 「統計では、米国の所得格差の拡大は1980年代から観察されていた。人々が認識し始めたのはリーマン・ショック後だろう。もっと早く手をつけておけば、経済を縮小する恐れがある保護主義は台頭しなかった」

 ――資本主義は機能不全に陥ったのですか。

 「そうではない。資本主義が広がったおかげで世界は豊かになった。新興国が豊かになり、先進国が得していた部分が少なくなった。社会主義が出てきた時、資本主義国は福祉の充実や公的部門の拡大で所得格差を縮める努力をした。それがいま足りなくなっている」

 ――具体的に何をすべきですか。

 「一つは税や社会保障を使って、低所得者の賃金を補助することだ。もう一つは若者や中高年への教育投資をすることだ。企業に賃上げをしてもらうことは難しい。労働分配率を高めないと社会システムを維持できないという認識が共有され、賃上げによってより利益が上がるという考えが広がるといい」

 ――日本は賃金の伸び率は低いままです。

 「いや、むしろ上がっているとみるべきだ。中国やインドなど新興国の人的資本が厚くなり、米欧の先進国は厳しい競争にさらされている。賃金には潜在的な低下圧力がかかっている。そのなかで日本は人口減少による人手不足もあって、賃金に上昇圧力がかかり、トータルで賃金がわずかに上がっている」

 「日本をはじめ、先進国の長期停滞論がいわれ始めた。財政政策では、一時的な需要をつくれても持続的な成長は実現できない。企業経営や働き方を変えるような地道な取り組みの積み重ねでしか、成長は高められないからだ。長時間労働で、生産性が低い日本は非効率な点を改善する余地がある」

 ――なぜ、物価は日銀が描いた通りに上がらないのですか。

 「将来物価が上がるといくら日銀が言っても、期待は今までどうだったかを踏まえて形成されるものだ。期待が変われば、人々の物価感も変わると考えた日銀は甘かったのではないか。量的緩和を拡大することには限界があり、金利に軸足を置いた政策変更は妥当な判断だった」

 ――財政の立て直しも課題です。

 「消費増税の先送り決定はよくなかった。生産性を上げるための研究開発など他に予算を振り向けるべきところがあるのに、社会保障に食われて成長の芽を摘んでいる」

 「賃金が下落したら年金も抑制する法律を野党は年金カット法と呼んだが、シルバー民主主義を克服する手段としてその内容を高く評価している。経済を活性化しないと年金が増えないということを意識するようになれば、高齢者は若者をサポートする政策に賛成しやすくなる」

(聞き手は経済部 藤川衛)

 1983年京都大経卒、85年大阪大院修了。専門は労働経済学、行動経済学で格差問題の著書多数。研究と健康を兼ねて「ポケモンGO」にはまっている。55歳



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