山陽不、空き物件再生に新手法 低賃料 起業家ようこそ 2017/06/15 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「山陽不、空き物件再生に新手法 低賃料 起業家ようこそ」です。





山陽不動産(広島県福山市)が空き物件を若手起業家支援に活用した取り組みが新たな地域活性化のモデルとして注目を集める。空きビルや空室の多いアパートをおしゃれなオフィスビルに再生し、起業の拠点を探していた若者に低賃料で貸し出している。空き物件対策と起業家育成という地方共通の課題を解決するヒントになりそうだ。

「初期投資が安く済んで助かった」。司法書士の瀬川貴夫さん(34)は、2014年に独立して最初の拠点に福山市のオフィスビル「ディオポルテ」を選んだ。

若手の負担軽減

9.6平方メートルで敷金礼金なし、賃料は管理費込み月4万2000円。初期費用は保険料などを含め12万800円。周辺の貸オフィスは33平方メートル以上で賃料は管理費込み月6万5000円以上が多く、敷金礼金などを含めると初期費用は40万円近くかかるという。

「創業時の負担を減らして若い経営者を応援したかった」と山陽不の角田千鶴副社長。ディオポルテの建物は築29年で、1969年の創業から地元密着で事業を展開する同社が買い取るまで5年近く空いていた。14年に同社初の若手起業家支援ビルとして再生。2層を6.9~16.5平方メートルの10室に小分けして賃料を抑え、無料で使える共有の応接室やプレゼンテーションルームを設けた。

経営のサポートも特徴。角田氏が無料で経営相談に応じるほか、割安な料金で司法書士や税理士に相談できる。入居者と近隣経営者の交流会「ディオポルテクラブ」で人脈を広げ、勉強会やセミナーにも参加できる。

古いビルやアパートを再生した同様のビルは現在市内に6棟。条件に違いはあるが、賃料は低めでサービスは共通だ。入居条件は20~40歳前後の起業家・経営者で、26組が入居し、ほぼ満室。当初は自社物件だけだったが、15年から他のオーナーの物件も加えた。

司法書士の瀬川さんは15年に従業員を雇うため、他の支援ビルのより広い部屋へ移った。支援ビルの“卒業生”は約20組だが「廃業でビルを出た人はゼロ」と角田氏。

宮崎大学地域資源創成学部の丹生晃隆准教授によると山陽不のような起業家育成施設は全国に推定約300あり、公的機関の設置が中心。民間で不動産会社が都心の古いビルで運営する低賃料の育成施設もあったが、起業家経営相談で知られる静岡県の「富士市産業支援センター」の小出宗昭センター長は「実態として山陽不のような支援機能がなかった」と話す。

全国のモデルに

山陽不ではより専門的支援ができるよう、2月から福山市の中小企業支援拠点「福山ビジネスサポートセンターFuku―Biz(フクビズ)」と連携。担当者が支援ビルを月1回訪れ、入居者の無料経営相談を始めた。特定の民間の育成施設を公的機関が継続的に支援するのは珍しい。

福山市の空きビルやアパート空室の数は明らかでないが、総務省住宅・土地統計調査によると13年のアパートを含む賃貸住宅の空き家は1万4570戸。5年前より13%減ったが、空き家比率は19%と全国平均や近隣の広島市なみ。空き物件解消と起業家育成で山陽不の手法が他の地域の参考になる可能性がある。

支援ビルは社会貢献の面が強いが、小出氏は「フクビズのような公的支援を組み合わせることで全国に移植できる」とみる。

(福山支局長 堀聡)



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