岐路の大国インドネシア(上) 脱エリート支配に期待感 「ジョコ流」改革 ばらまき懸念 2014/07/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際1面にある「岐路の大国インドネシア(上) 脱エリート支配に期待感 「ジョコ流」改革 ばらまき懸念」です。

インドネシアの未来を占う記事です。





 インドネシアで10年ぶりに大統領が交代する。地方自治体トップから躍り出るのは「ジョコウィ」の愛称で親しまれるジョコ・ウィドド氏。異例の庶民派には汚職や「ばらまき」の削減と経済成長加速の期待がかかる。2億5000万人を束ねて改革を実行できるか。東南アジア諸国連合(ASEAN)の大国の行方はアジアの未来も左右する。

 「ありがとう。勝利は民衆との連携のたまものだ」。当選決定から一夜明けた23日。都心の公園で開かれた祝勝集会に姿をみせたジョコ氏を、支持者らがもみくちゃにした。肉声を聞こうと足を運んだデウィさん(35)は「ジョコウィなら庶民の生活をよくしてくれる」と興奮気味に話す。終盤戦でプラボウォ・スビアント氏に追い上げられたものの、大衆からの人気はなお抜群だ。

 株式市場でもこの日、ジャカルタ総合指数が一時、年初来高値を突破。投資家の支持の高さも印象付けた。

清廉さに支持

 1945年の独立以来、インドネシアでは、スカルノ氏やスハルト氏に代表される軍や良家出身者のエリート支配が続いてきた。ユドヨノ現大統領やプラボウォ氏も元軍高官。家業の家具販売を手がけていたジョコ氏は、全く新しいタイプのリーダーになる。国民が新指導者に求めたのはクリーンさだ。

 非政府組織(NGO)トランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数でインドネシアは177カ国・地域の中で114位とASEAN主要国では最悪。経済安定で人気の高かった現ユドヨノ政権も、幹部の相次ぐ汚職の発覚で支持を失っている。汚職は外資誘致にもマイナスだ。

 地方自治体トップ時代の実績から改革の担い手として期待が集まる点は、インドのモディ首相とも重なる。ジョコ氏は4月の総選挙のころから「党利で閣僚の席をわけることはしない」と、一貫して実務型の政権作りを宣言している。

 だが、国政の経験のないジョコ氏の実行力は未知数。大統領選が残したしこりや、少数政党の寄り合い所帯となる新体制も懸念材料だ。「脱・エリート支配」の看板を疑問視する声もある。

 「ジョコ氏を当選させることに成功した」。当選が決まった22日夕。第一声を求めて詰めかけたメディアの前で「勝利宣言」に涙声を震わせたのは、ジョコ氏が属する闘争民主党の党首、メガワティ前大統領だった。ジョコ氏は隣で静かに立っているだけだった。

 ジョコウィはメガワティの操り人形――。選挙戦で対立陣営が繰り返した中傷だ。メガワティ氏は自身の出馬に意欲的だったとされるが、昨年末の世論調査では支持率はわずか6%。人気者のジョコ氏を担ぎ、政権奪取後はメガワティ氏が主導権を握る。こんなシナリオがささやかれる。

 ただでさえ世界4位の2億5000万人の人口と多様な宗教や部族を抱えるインドネシア社会をまとめあげるのは容易ではない。経済成長のなかでも物価高で豊かさを実感できない国民の不満もくすぶる。

 「ガソリン代も駐車料も削れるものは削る」。会社員のダニさん(36)は最近、自家用車からバス通勤に切り替えた。1200万ルピア(約10万円)の月給は裕福な部類に入る。だが、インフレが進む中で2番目の子供も生まれ「毎週末の楽しみだった外食も月1回に減らした」とこぼす。

 インドネシアは人口の大半が低所得層にとどまるうえ、近年、所得格差は一段と開いている。格差の指標の「ジニ係数」は2013年時点で0.4強とかつての0.3台から上昇。プラボウォ氏がジニ係数の引き下げを公約に掲げたほど格差是正への関心は高い。

「6%成長」へ

 物価高や格差への不満は、「ばらまき」を求める声に直結する。燃料補助金の削減を掲げるジョコ氏も、選挙対策で農村や貧困家庭への現金支給を打ち出した。財源を浪費すれば、課題のインフラ整備に割ける資金も細る。金融分野や資源、労働市場で保護主義が強まる恐れもある。

 経済政策運営の混乱で、インドネシアの成長率は5%台に低迷気味。選挙戦で分断された世論をまとめ、国内の不満を抑えながら痛みを伴う改革にも取り組み、経済を巡航速度の「6%成長」に戻す――。人気者の新大統領が歩むべき道は、細く、険しい。

(ジャカルタ=渡辺禎央)

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