岐路の大国インドネシア(下) ASEANの要、責任重く 統合・連携 逆風も 2014/07/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際1面にある「岐路の大国インドネシア(下) ASEANの要、責任重く 統合・連携 逆風も」です。





 さながら映画「十戒」のワンシーンのようだった。昨秋、ブルネイで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議。ユドヨノ大統領を先頭にインドネシア代表団が到着すると、談笑していた他国の参加者が我先に脇により、ロビーには通り道が大きく開いた。

 人口と国内総生産でASEANの4割を占めるインドネシアは、地域の盟主として一目も二目も置かれる要の存在だ。「庶民派」のジョコ・ウィドド氏は、ASEANのリーダーという大役も担う。国政経験ゼロで手腕が未知数なだけに不安はくすぶる。

領有権争い静観

 ASEANは今、求心力の維持に2つの課題を抱える。一つは経済統合。ASEAN経済共同体の発足は2015年末に迫るが、関税削減以外の分野の歩みは遅い。

 分業を通じてモノのネットワークをつくり上げ、成長の原動力としてきたASEAN。規制緩和でサービスや金融の垣根を取り払い、ヒトとカネの流れを融合するのが次のステップになる。ジョコ氏は「銀行への外資規制強化」という公約を掲げる。大国が統合深化にブレーキをかければ、後発国に「開国」を避ける口実を与えてしまう。

 もう一つの課題は、中国と加盟国の南シナ海を巡る領有権紛争だ。

 「外国同士の問題だ。深く関与すべきではない」。6月下旬の討論会で、南シナ海問題について問われたジョコ氏はベトナム・フィリピンと中国の争いから距離を置く姿勢をみせた。ASEANは5月の首脳会議で「深刻な懸念」を表明する共同声明をまとめたばかり。盟主が日和見に逆戻りすれば、中国の覇権主義をけん制する連携が揺らぎかねない。

 中国は早くも動いている。ジョコ氏の当選から日も浅い24日。インドネシア国防省の一室では、プルノモ国防相と中国軍制服組トップの范長竜・共産党中央軍事委員会副主席が向かい合っていた。「南・東シナ海問題で中国の立場に理解を求められた」とプルノモ氏は明かす。

宗教対立各地で

 域内外から働く遠心力にどう抗していくか。今回の大統領選では、インドネシア一国でみても、分断の火種がくすぶっていることがほの見えた。

 「ジョコ氏はイスラム教徒ではなく、中華系のキリスト教信者だ」。対立陣営は終盤戦、ジョコ氏の支持層切り崩しを狙い、こんな事実無根の情報を流した。インドネシアは国民の約9割が信仰するイスラム教を国教とはしていない。宗教、種族、言語を超えた「多様性の中の統一」を国是とする。宗教や民族の違いに着目したネガティブキャンペーンが追い上げに一役買ってしまったことに、戸惑いが広がる。

 一歩引いてみれば、隣国マレーシアではイスラム教徒を優遇する政策が強まり、ミャンマーでも多数派の仏教徒と少数派のイスラム教徒の対立が再燃している。

 激戦となった大統領選が残した対立の傷を癒やし、国内をまとめ上げるのがジョコ氏の最初の仕事になる。その先には、排他主義を乗り越え、ASEANという6億人の巨大なモザイクをまとめ上げる責務が待つ。

(シンガポール=吉田渉)

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