島しょ国外交、中国と綱引き 2018/05/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「島しょ国外交、中国と綱引き」です。





日本と太平洋島しょ国16カ国・地域の首脳らが集まった太平洋・島サミットは19日、北朝鮮問題に初めて言及した首脳宣言を採択し、閉幕した。北朝鮮に非核化への具体的行動を要求。6月12日に予定する米朝首脳会談に向けて北朝鮮問題の解決へ協力する方針を確認した。(林咲希、台北=伊原健作)

宣言は北朝鮮の非核化へ「国連安全保障理事会の制裁決議を完全に履行する」と明記。朝鮮半島の完全な非核化を掲げた「板門店宣言」を歓迎した。

北朝鮮の海上密輸に関しては深刻な懸念を表明した。北朝鮮は公海上で他国の船舶と横付けし、違法に積み荷を移し替える「瀬取り」を繰り返す。国連安保理が禁止する石油精製品などを受け取るためだ。北朝鮮船舶の登録解除など取り締まりの強化を申し合わせた。

安倍晋三首相は共同記者発表で、北朝鮮の全ての大量破壊兵器とあらゆる射程の弾道ミサイルの廃棄を求めると訴えた。「完全で検証可能かつ不可逆的な方法で廃棄実現をめざすことで一致した」と明らかにした。

日本人拉致問題に関しては「早期解決に向けた理解と協力を求め、支持を得た」と語った。

首相は「国交正常化が実現すれば北朝鮮の発展に不可欠な経済協力が可能だ」と指摘した。

島サミットは3年ぶり8回目。18~19日に福島県いわき市で開いた。太平洋島しょ国16カ国・地域とオーストラリア、ニュージーランドの首脳らが参加した。陰の主役の台湾、日本は協力模索

陰の主役の台湾、日本は協力模索

太平洋・島サミットの陰の主役は会合に参加していない台湾だった。島しょ国の取り込みにかかる中国との駆け引きを演じているためだ。

太平洋島しょ国の16カ国・地域のうち、中国と台湾が国交を結ぶ国は8対6で拮抗している。ニューカレドニアと仏領ポリネシアは「国」ではなく外交関係を持たない。台湾の承認国は現在19カ国で、約3分の1が太平洋島しょ国に集中する。

独立志向の民主進歩党(民進党)の蔡英文氏が2016年に総統に就いて以降、中国は台湾を国際社会から孤立させようと圧力を強めてきた。西アフリカのサントメ・プリンシペと中米のパナマ、ドミニカ共和国の3カ国が台湾と断交し、中国と外交関係を築いた。

日本は台湾と国交を持たないが、本音では協力拡大を模索する。東アジアと南シナ海やインド洋を結ぶ要衝にあり、中国の海洋進出を食い止めるとりでだ。地政学上、東アジアの安全保障のバランスに直結する。台湾の国際社会での地位低下は、中国が対台湾に配分してきた軍事資源が他に向く危険もはらむ。

「島しょ国への日本の影響力が強まるのを歓迎する」。民進党関係者は話す。中国の勢力拡大を危惧する台湾は「民主主義など価値を共有するパートナー」として日本の役割に期待する。安倍首相は2月の台湾地震の際に「台湾加油(頑張れ)」との手書きメッセージを交流サイト(SNS)に投稿。蔡氏はツイッターで「まさかの時の友は真の友」と呼応した。

台湾と国交を持つ島しょ国6カ国は今後2年程度で大統領選などの大型選挙を迎える。中国が政局の隙を突き、援助の代わりに台湾との断交を促す――。日本政府にはこうした危機感がある。

実際、ナウルは02年に台湾と断交し、中国との国交に切り替えたことがある。トンガも1998年に台湾と断交したきりだ。日本政府関係者は「政権の都合のよいほうに左右された」と語る。

中国は島しょ国への関与を強める。パラオの地元メディアは中国が団体旅行を禁じたと報道。パラオは中国にとって台湾への米国の干渉を防ぐ防衛ライン「第2列島線」上に位置し、渡航自粛は断交圧力とみられる。4月には中国がバヌアツに軍事拠点を建設するとの豪紙報道もあった。

19日の首脳宣言は安倍首相が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」を盛り込んだ。海洋の法支配の重要性に言及、相手国の返済能力を無視したインフラ開発を進める中国をけん制した。

日本は政府開発援助(ODA)を通じた協力で島しょ国をつなぎとめる。資金力では対抗できないが、インド太平洋戦略に同調する米豪との連携を後ろ盾に質の高いインフラ投資を売り込む。

「島の首脳によろしく」。中国の李克強(リー・クォーチャン)首相は8~11日に来日した際、安倍首相に語りかけた。日中が関係改善を進める足元で中台の勢力圏争いを巡る攻防が続く。



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