巨大デジタル企業の独占許すな ジョージ・ソロス氏 2018/03/16 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「巨大デジタル企業の独占許すな ジョージ・ソロス氏」です。





いまは世界史上でも困難な時期にみえる。開かれた社会が危機にひんしており、独裁政権やプーチン大統領のロシアに代表されるような「マフィア国家」が台頭する。米国ではトランプ大統領がマフィア国家をつくろうとしているようだが、無理だ。憲法や制度、活力のある市民社会が許さない。

(画像:George Soros ハンガリー生まれのユダヤ系米国人。世界で最も著名な投資家の一人で、慈善活動家や政治運動家としても知られる。87歳。)

開かれた社会だけでなく、文明全体の存続も危険にさらされている。人類の自己抑制の能力が揺らぎ、後退している。巨大な米デジタル企業の台頭と独占行為は、米政府の能力を脆弱にする。デジタル企業はしばしば革新的で、人を解放する役割を果たしてきた。だが力が強まった結果、かえって革新の障害となり、さまざまな問題を引き起こす。人々が気づかないうちに民主主義や選挙に介入し、考え方や行動に影響を及ぼす企業は特に悪質だ。

ソーシャルメディアのフェイスブックと、検索や広告のプラットフォーム(基盤)を提供するグーグルは事実上、デジタル広告市場の半分以上を支配する。支配力を維持するためにはネットワークを拡大し、利用者により注目してもらう必要がある。いくつかのデジタル企業はプラットフォーマーとも呼ばれ、利用者がビジネスや情報配信などのプラットフォームにできるサービスやシステムを提供している。

企業などはプラットフォームの利用条件を受け入れなければならず、デジタル企業の利益に寄与している。デジタル企業は情報を配信しているだけだと主張するが、独占に近く、実質的に公益事業者といえる。競争や革新、公正で開かれたアクセスのため、厳しく規制される必要がある。

デジタル企業の本当の顧客は広告主だ。しかしデジタル企業が製品やサービスを直接、利用者に売るビジネスモデルが姿をあらわしている。利用者の関心を操作して誘導し、デジタル企業に頼らざるをえなくする。特に思春期の若者には有害だ。人々の関心をかたちづくる能力が、わずかの企業に集中するようになっている。

(19世紀の英経済学者の)ジョン・スチュアート・ミルが呼んだ「精神の自由」を主張し、守るには大変な努力が必要だ。いったん失われると、デジタル世代が精神の自由を取り戻すのは難しくなってしまうかもしれない。精神の自由がない人々を操るのは簡単で、2016年の米大統領選でも重要な役割を果たした。

さらに警戒すべき事態も予想される。専制主義の国家と、大規模で豊富なデータを持つデジタル企業の同盟により、国家と企業による監視が結びつくことだ。(英国の作家で監視社会を描いた)ジョージ・オーウェルも想像できなかったような、全体主義的な管理社会が生まれる可能性がある。

特に中国のデジタル企業は米企業と肩を並べ、習近平(シー・ジンピン)国家主席の政権から全面的な支援を受ける。中国政府は、自国内では主要企業を守る十分な強さがある。米デジタル企業は、中国のような巨大で急成長する市場で活動するため、妥協する誘惑にかられている。独裁的な指導者は国民を管理する手段を強化し、米国などでも影響力を拡大しようと喜んで協力するかもしれない。

デジタル企業の行動から社会を守るのは、規制当局の仕事だ。米国の当局はデジタル企業の政治的な影響力に立ち向かうほど強くない。EUは、巨大デジタル企業がEUに存在しないため、より強い立場を取れる。欧州のプライバシーとデータ保護は米国よりはるかに厳しい。

(EUの執行機関である)欧州委員会は17年6月、グーグルがEU競争法(独占禁止法)に違反したとして、24億2000万ユーロ(約3100億円)の制裁金を払うよう命じた。欧州委員会がグーグルの調査を始めてから7年近くを要したが、十分な規制を導入する流れは、大幅に加速した。課税なども含め、欧州のような手法は米国の姿勢に影響を及ぼし始めている。米デジタル企業の影響力の低下にもつながるだろう。

((C)Project Syndicate)

透明な仕組みに

透明な仕組みに

ソロス氏は東欧をはじめ世界の民主主義を支援する活動をしているが、ロシア系のサイトなどを通じて度々攻撃を受けてきた。なかには陰謀論めいた虚偽の情報も含まれており、その意味ではネット情報の中身に無頓着だったデジタル企業の「無策」による被害者でもある。

デジタル企業の反競争的な行為を取り締まったり、虚偽情報の横行を防いだりするのは重要だ。提供されるコンテンツやデータには正当な対価も支払われるべきだ。

半面、政府の関与を安易に強めれば弊害も起きうる。民主国家でも時の政権がネット空間を政治的に利用する恐れはある。デジタル企業のネット運営と政府の規制は共に透明性の高いものでなければならない。外部のチェックが働き常に見直されうる仕組みにする必要がある。

(編集委員 実哲也)



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