市場の力学 選ばれる会社(上)1億円調達でも利息は1000円 「借金=重荷」崩れる図式 2016/07/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「市場の力学 選ばれる会社(上)1億円調達でも利息は1000円 「借金=重荷」崩れる図式」です。





 株式市場が求める企業の姿が変わった。従来の常識にとらわれない変革力で市場に選ばれる企業になれるか。

 買収劇は迅速だった。不動産大手のヒューリックは5月、東京・お台場の「グランパシフィック LE DAIBA」を京浜急行電鉄から取得した。交渉期間は通常の半分となる3カ月。ホテルの買収額として過去最高となる600億円強の支払いを即座に決めた。

 現ナマを積み上げるような交渉術は金融機関10行と結んだ2500億円の融資枠が支える。銀行員だった吉留学社長は「資金調達力がなければ物件の調達力がなく企業の成長力もない」と話す。

 金融危機やリーマン・ショックを経て日本の経営者の脳裏に「借金=悪」との図式が刻まれた。だが、マイナス金利時代の常識は違う。トヨタ自動車の金融子会社が発行した期間3年の社債は利率が年0.001%だ。1億円借りても毎年1000円払えばいい。市場ではマイナス金利の社債も時間の問題と見る。

機会損失こそ敵

 ソフトバンクグループが大きな賭けに出た。3.3兆円を投じて英半導体設計のアーム・ホールディングスを買収する。中国・アリババ集団株の売却などで約2兆円を手にしてから1カ月。「また大胆な投資や事業を興す」という孫正義社長の言葉が現実になった。

 ソフトバンクが志向するのは借金を巧みに使い成長する「レバレッジ経営」だ。グループの金庫番、後藤芳光財務部長は財務規律の重要性を説きつつも「一時的な格付け悪化はいとわない」と話す。借金をためらい有望な投資先を逃す機会損失こそが最大の敵と説く。

 2013年春の日銀の異次元緩和で借金のコストは急低下した。これ以降に借り入れを増やした主要企業の7割が株式の時価総額を増やしている。投資家にとって借金は必ずしも悪ではない。

 もちろん投資にはリスクが伴う。M&A(合併・買収)に詳しい早稲田大学大学院の服部暢達客員教授は「日本企業は大きな買い物が好きだが、失敗例も多い」と指摘する。

「なぜため込む」

 「借金返済だけでは成長はおぼつかない」と富士通ゼネラルの庭山弘副社長は今、思う。2000年代初め、840億円に膨らんだ借金は経営の自由を奪った。借金返済を進めて前期末の借入金はゼロ。目標を達成して気が付けばマイナス金利の世界が広がっていた。

 投資家から「なぜカネをため込むのか」と質問されると庭山副社長は「成長に使う」と反論する。米国でのM&Aを視野に入れて4月に社長直轄のチームを立ち上げた。もちろん借金活用も選択肢だ。

 今や上場企業の6割近くが実質的に無借金だ。借金を賢く使うのにこれほど条件が整った時はない。リスクを恐れ無借金に安住すれば成長力も市場の評価も得られない。



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