市場激動 識者に聞く 不安増幅 世界脅かす 国際通貨研究所理事長 行天豊雄氏 2016/02/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合2面にある「市場激動 識者に聞く 不安増幅 世界脅かす 国際通貨研究所理事長 行天豊雄氏」です。





 ――市場波乱の原因をどうみるか。

 「世界の金融市場には2007~08年の危機からまだ回復し切れていないのだという不安感、自信のなさがある。米利上げや原油安、中国経済の減速などで市場が大きく揺れたが、世界が危機的な状況だとの確信ある悲観論が広がったわけではない。どうしたらよいか分からないという途方に暮れた状態ではないか」

 ――経済にはどのような影響があるのか。

 「世界経済がまた景気後退に陥るという恐怖感が非常に強い。そう思って行動すると、投資も消費も進まず実際に景気後退に陥ってしまう。著名投資家のジョージ・ソロス氏がいうリフレキシビティー(再帰性)といえる状況で、行動と結果が増幅しあっている」

 「ただ、私自身は世界が景気後退に陥ることはないとみている。世界経済の成長鈍化への不安を唱える向きもあるが、理論的に解明されたものではない。米景気も腰折れしていない。心理の問題という面が強い」

 ――20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議も近い。

 「主要国がどのような政策を進めていくのか、世界的な規模で透明性の向上に取り組むべきだ。透明性には国によってだいぶ差がある」

 ――中国の構造改革が大きな焦点だ。

 「中国は過剰投資、過剰融資を解消して内需主導の経済にするという構造改革の渦中にある。人民元は安くなって当然だ。当局も緩やかな元安を望んでおり、ドルだけでなく円やユーロも含めた通貨バスケットに対する安定を重視する方向に制度を変えた。だが、制度変更の説明が不十分だったため、市場の混乱を招いた。中国当局もそこから教訓を得たはずだ」

 「SDR(国際通貨基金の特別引き出し権)の構成通貨に採用されて(世界が)人民元を見る目が厳しくなった。身から出たサビだが、まだ途上国で、国家資本主義を進めてきた国だということは忘れてはならない」

 ――日本はマイナス金利政策など日銀の金融緩和だけが目立つ。

 「できることはすべてやっている。世界の金融史でも特筆すべきものだ。ただ、金融緩和の効果を実体経済にどう伝達していくかという問題があり、期待通りの結果にはなっていない」

 「確かに円安・株高が進んだが、将来への期待や安心がなければ、企業や家計は投資や消費に動けない。人口減対策や社会保障制度の安定、財政再建などの中長期的に解決しなくてはいけない課題に対し、最初の一歩を踏み出すことが重要だ」

 ――マイナス金利政策自体への評価は。

 「効果としてはマイナス金利で投資が積極化することだろうが実際にどうなるかは分からない。副作用では住宅バブルが懸念されるが、1980年代後半に1度経験した日本では考えにくい」

 「中央銀行が金融政策を考えられる手段、規模に広げていくというのは正しい。効果はマイナスではなさそうだが、プラスかどうかは分からない。金融政策の手段は無限ではなく、先々の選択肢は減っていく。金融政策だけで事態は解決しないというのが、日本が過去20年で得た教訓だ」

(聞き手は石川潤)

=随時掲載

 元財務官。1970年代以降の金融と世界経済の軌跡に詳しい。85歳。



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