忖度しすぎ?シルバー民主主義 負担増受け入れる素地 2017/8/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のくらし面にある「忖度しすぎ?シルバー民主主義 負担増受け入れる素地」です。





 年金は少しでも多く、医療・介護や税の負担は少しでも小さく――。若者に比べて高齢者を優遇する「シルバー民主主義」政策が財政を悪化させてきた。お年寄りがこれからますます増えるなか、目先の痛みを強いる財政再建など、とても支持を得られない。だがこうした常識を覆す研究が出てきた。諦めるのはまだ早い。(木原雄士)

商店街を歩くお年寄り(東京都豊島区)

 お年寄りの政治への影響力は大きい。直近3回の衆議院選挙の平均投票率は20代が39%なのに対し、60代は75%だった。2025年には、有権者の6割が50歳以上になる。病院の窓口負担を増やしたり、年金の給付額を減らしたりするのは難しくなるというのが霞が関や永田町の常識だ。

 政治家は投票所に足を運んでくれる人の意向を気にする。それなら選挙制度を変えるしかない。そこで親が子どもの分まで投票する「ドメイン投票」や、年齢が若いほど1票の価値を高める「余命投票」などが真剣に議論されてきた。

 しかし、本当に単純な世代間対立で語れるのかと異議を唱える研究が最近、出てきた。

 鶴光太郎慶大教授らが全国の6128人に税制と社会保障に関する考え方を聞いたところ「増税をして社会保障を拡大する必要がある」とした人が20代では29%で、60代では40%だった。高齢になるほど高くなる。高齢者はすでに社会保障の恩恵を受けており、実利の面から増税と社会保障充実の組み合わせを選んだ可能性がある。

 一方、20代で最も支持を集めたのは「増税をせず社会保障を拡大する」というただ乗りで、35%を占めた。高齢者に比べてすぐに社会保障の恩恵を感じにくいため、増税への支持が少ないようだ。調査では政府やまわりの人への信頼が低く、ゴミのポイ捨てや年金の不正受給などに目をつぶる「公共心の低い人」ほどただ乗り政策を選ぶ傾向もあった。

 財務総合政策研究所の広光俊昭氏は仮想の国の財政政策について、負担を30年後に先送りするか、現世代と将来世代が分かち合うかを10~70代の447人に聞いた。

 先送りは、30年後に付加価値税(消費税に相当)が10%から25%に、年金給付が月10万円から5万円になる。分かち合いは付加価値税が20%、年金給付は7万円の状態がずっと続く。

 30代は67%が、60代は54%が分かち合いを支持。「将来世代」役を1人置いて討議をすると、分かち合いを選ぶ割合はさらに高まった。広光氏は「政策選択には個人的な利害と公共的な判断が併存して働く」とみる。

 「政治家が高齢者の意向を勝手に忖度(そんたく)しているだけ。きちんと説明すれば高齢者もある程度の負担増を受け入れる」。「シルバー民主主義」(中公新書)を書いた八代尚宏・昭和女子大学特命教授はいう。

 ただ、お年寄りの理解を得ても財政再建のハードルは高い。莫大な国の借金が若者の不安につながっている。鶴氏は「若い人でも目先の利益を重視する傾向がある」と話す。教育年数が短く、時間あたりの所得水準が低い人ほど、小さな負担で大きな受益を求めがちという。世界的に所得格差の不満が高まるなか、新たな人気取りは財政再建をより難しくする。

■財政再建、成長頼み限界

 日本で財政悪化に対する危機感が高まりにくいのは、日銀の金融政策によって長期金利が低く抑えられているためだ。安倍政権は消費増税を2回先送りし、経済成長による債務残高の国内総生産(GDP)比の改善を優先する。しかし痛みを避けた財政再建など、夢物語だ。

 ゴールドマン・サックス証券の試算によると、長期金利がゼロ%のまま推移しても、債務残高GDP比を改善させるのは難しい。長期金利が1.5%まで上昇するなら、債務残高GDP比を一定に保つには、常に名目2%以上の高い成長が必要だ。2000年度以降の日本の成長率は、平均0.2%。成長頼みの財政再建は無理がある。

 しかも25年には団塊の世代が75歳以上となり、社会保障費が急増しかねない。国際通貨基金(IMF)は7月末に、日本に対し消費税率を15%に引き上げることや所得税の課税ベースの拡大、年金の支給開始を67歳以上に後ろ倒しすることなどを提言。急激な増税などで不況にならないよう、0.5~1%ずつの小幅な消費税率引き上げを求めた。

 消費税率が上がるのは19年10月の予定。足元の堅調な景気を受け、エコノミストの間では「増税時期を前倒しすべきだ」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)との声も出てきた。政界では「3度目の増税延期」がささやかれるが。



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