忖度生む土壌 官邸へチェック利かず 2018/06/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「忖度生む土壌 官邸へチェック利かず」です。





――首相官邸の力が強くなりました。

「自民党は2012年に政権を奪還し、13年の参院選にも勝利したが、当時は安倍政権がどこまで続くか政も官も半信半疑だった。だが集団的自衛権の閣議決定後の14年の衆院選で勝って変わった。政権が長期化するという見通しが強まり、おごりや忖度(そんたく)が生じた。森友・加計学園など一連の問題は14年末以降に発生した」

――野党の弱さは官邸の強さにつながりますか。

「野党へ政権が移る危機感が自民党にあればもう少し違ってくるはずだ。私は二大政党制の実現には懐疑的だ。野党が再生して政権交代が起きる可能性は当面ない。自公と野党には2つ違いがある。厚い支持基盤と結束力だ。野党は弱く、緊密な連携もできない。勝つハードルが非常に高い」

――官僚も与野党の力の差を認識しています。

「そう見ているから、官僚は強い方に近づく。自民党は過去の政権転落の経験から、二度と同じ失敗を繰り返すまいと安倍晋三首相のもとで結束している」

「もともと小選挙区制の導入を軸とする政治改革は、首相官邸に権力を集中させる一方で、二大政党間の政権交代によってチェックを働かせるというものであったが、そうなっていない。野党の低迷で、制約なき官邸主導に陥っている」

――過去の長期政権と現政権の違いは何ですか。

「小泉政権は自民党内の抵抗勢力を使ってエネルギーにした。現政権は違う。敵は野党勢力であり、党内は結束している。安倍首相は各派領袖を閣僚や党役員に起用し、派閥取り込みに成功している。党内の多元性が弱まり、この面でも官邸へのチェックが利かなくなってきている」

「いまは首相の秘書官や補佐官ら『官邸官僚』が個別案件に関わり各省に指示を出す。その影響力が極めて大きいのが現政権の特徴だ。官邸官僚が持つ各省へのパイプが、政治主導を補完する形で機能している。その結果、政権存続という考慮が各省の判断に入り忖度が起きたのではないか」

――官邸官僚が生まれる原因は何でしょうか。

「2つある。1つは安倍政権の特殊性だ。第1次政権が1年で崩壊しながら、それでも安倍氏から離れなかった政治家や官僚が結束して再起を果たした。コアが固い政権だ。もう1つは内閣人事局の創設だ。首相官邸が幹部官僚の人事をテコに各省をコントロールする度合いを格段に強めた」

――官邸主導のマイナス面をどうみますか。

「公文書の改ざんなどはあり得ないことだ。官僚が守るべき最低限の原則まで曲げてしまう現状は危うい。日本では官僚と政治家が、それぞれの持ち分の上で協働してきた。財務省なら財政規律など、各省には所管する政策に不可欠な機関哲学がある。それを官邸が上から圧し過ぎるのは行政上のデメリットだ」

――新たな改革が必要な局面と思いますか。

「いまの政と官の融合の仕方を考えると、官邸主導が強く利きすぎだ。国民にも自民党にもマイナスだ。政と官の明確な分業が難しい以上、少し旧来型の方向に戻した方がバランスがとれる」

「幹部官僚の人事は、官邸の基本方針のもと、原則として各省の閣僚が決める方がいい。少なくとも内閣人事局が扱う幹部官僚の範囲を狭くすべきだ」

(1面参照)

1面参照

 なかきた・こうじ 大阪市立大助教授、立教大教授などを経て現職。49歳

なかきた・こうじ

7月4日付朝刊で関連特集を予定しています。



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