戦後70年 これからの世界(2)財政再建へ負担 覚悟を 元日本銀行総裁 福井俊彦氏 2015/08/08 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「戦後70年 これからの世界(2)財政再建へ負担 覚悟を 元日本銀行総裁 福井俊彦氏」です。





 ――戦後日本経済についての評価は。

 「明治以来の産業育成の流れは戦争で絶えることなく、戦後は努力の対象が経済に集中した。パクス・アメリカーナの時代に、経済優先の行き方はマッチした。ラグビーでいえばタイトスクラムを組みひたすらゴールに突進する陣形だった」

 「1980年代前半に戦後の日本経済はピークを迎えた。今でも耳に残っているのは、当時の経済界の方から聞いた『もはや欧米に学ぶものなし』という言葉だ」

組織を開くとき

 ――冷戦後の日本はグローバリゼーションへの対応に手間取りました。

 「グローバリゼーションの流れは、89年のベルリンの壁の崩壊で加速した。それと並行しIT(情報技術)革命が起き、90年代半ばからは怒とうのようなインターネット時代となった。米国は経済が苦しかったがゆえに、潮流の変化にいち早く賭けた。日本は『学ぶものなし』との姿勢が災いし取り組みが遅れた」

 ――新時代にどう取り組むべきでしょうか。

 「個々人がバラバラに行動しているようでいて、ある時期に締めくくってみると、より大きな成果を上げる。再びラグビーに例えれば、ルーズスクラムが大切になる。パスワークは毎回かわるが、キチンとボールが見える。そんな陣形だ」

 「工場中心から知識創造・価値創造への移行には、オープンビジネス、オープンイノベーションといったオープンな(開かれた)体系が求められている。これは先進国に共通の課題ともいえる」

 ――日本には人口減少という問題もあります。

 「人口減を打ち消す強いイノベーションが重要となる。高齢者でも元気のいい人は働き続けられる条件を整備し、女性の社会進出を後押しすることが大切になる」

 「女性進出を労働力不足の解消といった、量の問題としてばかりとらえていてはダメだ。知識創造のベースを広げるという視点こそが重要だ。男女が平等にブレークスルー(問題突破)に挑む。人間の半分は女性なのだからその力を取り入れることが大切だ」

 ――21世紀に日本が生き残るための課題は。

 「厳しい生存競争の中で、弱点を認識することが重要。財政の悪化に対する国民の意識が弱すぎる。負担を覚悟しながら、政府に一段の取り組みを求める世論がないといけない。成長や人口増を前提とした社会保障の枠組みは再設定の必要があり、世代間の利害調整の国民的議論が急がれる」

中韓と役割共有

 ――国際社会での日本の立ち位置については。

 「日本と中国、韓国。この3カ国の経済規模を合わせると、2020年の東京五輪までには米国を追い越すはずだ。東アジアの一角は間違いなく世界最大の経済圏となる。当然、安全保障や経済における責任も増してくる」

 ――両国との関係は良好とはいえません。

 「歴史認識など困難な課題もあるが、新しい世界経済のリーディング役としての課題を、きちんと果たせるよう交流をもっと密にして、お互いの役割を共有すべきだ。実際の課題を話し始めれば、中身も深まっていく。世界が耳を傾けざるを得なくなるという意味で、東アジアの情報発信力も格段に高まるだろう」

(聞き手は編集委員 滝田洋一)



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