戦後70年 これからの世界(3)大同団結で世界に挑め 京セラ名誉会長 稲盛和夫氏 2015/08/09 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の1面にある「戦後70年 これからの世界(3)大同団結で世界に挑め 京セラ名誉会長 稲盛和夫氏」です。





 ――戦後70年の歩みをどう総括しますか。

 「戦争直後は食糧も十分ではなく、産業も壊滅状態だった。そんな逆境を乗り越えようと、日本人全員が懸命に努力した。焼け跡の中からソニーやホンダのようなベンチャー企業が彗星(すいせい)のごとく現れ、日本経済は世界が目を見張る発展をなし遂げた

 「その勢いが1990年前後のバブルの時代に頂点に達し、その後は停滞した。豊かになると安楽をむさぼるのは人間の常で、これは自然の成り行きかもしれない」

社員の心一つに

 ――停滞から抜け出すカギは何でしょう。

 「世界中から強い企業が次々に現れるなかで、狭い市場に多くの日本企業が群雄割拠していたのでは競争に勝てない。大同団結して世界に通用する力をつけるべきで、場合によっては小異を捨てて大同につく合併のような動きがもっと進んでもいい。経営者は『一国一城のあるじ』に満足するのではなく、勇気を持って業界の再編などに取り組んでほしい」

 「社員の気持ちを一点に結集できるかどうかも大切だ。私が関わった日本航空の再建では、何万人もの社員の気持ちが同じ方向にそろったが、ピラミッド型の官僚的な大企業組織で社員の心を一つにまとめるのはなかなか難しい。だが、年功序列などの慣行にとらわれず、社内を見渡せば、みんなを引っ張る人材がどこかにいるはずだ」

 ――京都企業は元気さが目立ちます。企業が学ぶべき点はどんなところですか。

 「お隣の大阪と京都を比べると、顕著な違いは大阪の企業が本社を東京に移したがるのに比べて、京都企業は京都から動こうとしないことだ。政府機関や情報の集まる東京のほうが何かと便利なことも多いが、京都の企業や経営者はあえて背を向け、『我が道を行く』の気概でやってきた。それがユニークな技術や製品、サービスにつながっていると思う」

「耐える勇気」を

 ――70年の節目を迎え、歴史や安全保障をめぐる議論も盛んです。

 「私が終戦を迎えたのは中2の時で、住んでいた鹿児島市は連日の空襲で焦土と化した。戦争の悲惨さを知る人間として、私たち日本人は『耐える勇気』を持たないといけないと思う。専守防衛に徹して、平和を愛する日本民族に牙を向く国はそうはないだろう。だが、最近の安保法制の議論などを聞いていると、『耐える勇気』よりも『一歩前に踏み出す勇気』のほうがまさっている感じがして、先行きを危惧している

 ――今後の世界で日本の果たすべき役割は。

 「親切心やおもてなしの気持ちなど日本人が昔から持つ優しい心根を大事にしたい。今後、日本経済がどんどん強くなっていくという状況ではないが、日本人の『美しい心』が世界に伝われば、多くの国や人々を魅了すると思う」

 ――今後の企業経営はどうあるべきでしょう。

 「これまで資本主義は欲望をエンジンとして発展してきたが、それが行き過ぎるとリーマン・ショックのように欲の塊が経済破綻につながるということにもなる。自分を横に置いて、他人に尽くすという『利他の心』で生きていく転換がいまこそ必要だと思う」

(聞き手は編集委員 西條都夫)

 いなもり・かずお 1955年鹿児島大工卒。59年に京都セラミック(現京セラ)、84年には第二電電(旧DDI)を設立。2005年から現職。「盛和塾」で経営者指導に力を注ぐ。83歳



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