戦後70年 これからの世界 (4)強大ドイツにきしむ欧州 仏国立人口学研究所研究員 エマニュエル・トッド氏 2015/08/10 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の政治面にある「戦後70年 これからの世界 (4)強大ドイツにきしむ欧州 仏国立人口学研究所研究員 エマニュエル・トッド氏」です。





 ――2002年の著書で米国の衰退を予測しました。

 「米ソ冷戦の終結後、唯一の超大国だったがそれが崩れつつある。私の予測は米がドイツへの統制を失ったことで的中した。米は過去と同様に独の過度な反ロシア主義に追随したり、人種差別に苦しんだりしている」

 「かつては世界の問題解決役だったが(息子の)ブッシュ政権時に問題児となり、過激派組織『イスラム国』(IS=Islamic State)を生んだ。今は解決役であり、問題児でもある」

文化の分裂直面

 ――欧州では独の存在感が突出しています。

 「欧州は2度の大戦の前のような文化の分裂に直面する。1871年に成立した強大な独帝国の出現に周辺国は動揺し、地域情勢は不安定になった。今も似た構図だ」

 「北欧やポーランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟は、本来は対ロけん制と米の影響力強化が目的だったが、結果的に独の経済圏を広げた。独は武器を持たずエリート主義の過去に戻った。独経済の強さは続くだろうが、あの国は外交で成功した例がない」

 「欧州が向かうのは均質化ではなく階級化だ。独が頂点に立ち、民主主義が終幕に近づく。ギリシャに課そうとする官僚支配はまるでファシズムで、欧州連合(EU)崩壊への第一歩にみえる」

 ――世界はテロとの戦いを強いられています。

 「欧州は統合や経済の停滞から目をそらすため、対テロやイスラム過激派、ロシアの脅威へと強迫観念を広げた。敵を求める欧州の姿はイラク戦争時の米と似ている。仏週刊紙銃撃で確認されたように移民系の若者の喪失感は大きい。未来に希望を持てず、自発的テロを起こす」

 ――中国が政治、経済の両面で存在感を増しています。

 「急成長で無視できない存在になったのは事実だが、中国の未来に楽観的な人口学者はいない。男子の出生が多く出生率低下が速い。人口の多さが国際社会に負の影響を及ぼす。17世紀以降に英系米国人社会が定めた現代的な価値観にそぐわないのも、世界のリーダーにはなれない理由だ」

 ――国連の機能不全が指摘されています。

 「安全保障理事会にインドと日本はいて当然だ。フランスは(米国への追従に一線を画す)シラク大統領の時代を最後に座席を維持する権利を失った。世界が米一極から再び多極化すれば国連の役割は明快だ。安保理は中ロとの対話が可能な唯一の場だ」

移民は不可欠

 ――日本の存在と役割をどう評価しますか。

 「日本は米に次ぐ世界2位の経済大国にのし上がった。今は(中国に抜かれ)3位だが、技術革新力ではなお2番目の位置にいる。世界の価値観を創れる国の一つだ。日本の再軍備を懸念する人がいるが、中国との関係が緊張する中、もし私が安倍晋三首相なら、自国の過去の軍事行為を厳しく自己批判したうえで防衛力を一段と強化する」

 ――人口減の日本は移民を受け入れるかどうか議論しています。

 「移民受け入れは不可欠だが、複雑な問題だ。朝鮮半島出身者が日本社会に溶け込む難しさは誰もが知っている。2度目の明治維新さながらの国民意識の転換が必要だ」

(聞き手はパリ=竹内康雄)

 Emmanuel Todd 人口学者。ソ連崩壊を予言した「最後の転落」(1976年)や、米国が衰退期に入ったと指摘した「帝国以後」(2002年)は世界的なベストセラーに。64歳



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