戦後70年 これからの世界 (5)政治主導、ルール明確に 東大名誉教授 佐々木毅氏 2015/08/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の政治面にある「戦後70年 これからの世界 (5)政治主導、ルール明確に 東大名誉教授 佐々木毅氏」です。





 ――戦後政治をどう評価しますか。

 「日本の歴史で、これほどの経済成長は過去なかった。それに出会って安定した政治ができたという意味で1989年までは運も何割かあった。いよいよ実力が問われる時代に入り、『昔よかったからまだやれる』という調子でやるとまずいことになるのではないか」

 ――戦後のほとんどは自民党政権でした。

 「政治の仕事はある時期まで配分だった。利益の配分メカニズムが定着し、その門番を自民党がやっていた。配分がほしい人はそこにアクセスするしかないので、配分者は常に権力を持てる」

脱「配分政治」を

 ――小選挙区制の導入に尽力されました。

 「一番はカネの問題。自民党の候補は個人競争になっていた。だから選挙制度審議会で最初に決めたのは中選挙区制の廃止だった。当時は自民党が圧倒的に大きな存在だから、それと対抗する勢力(の育成)が念頭にあったわけもない」

 ――政治の混乱とバブル景気の崩壊が1990年代に同時に来ました。

 「配分だけをやっているわけにいかなくなって政治の役割が変わった。まずはバブルの後始末をしなければならん。政治には追い風といえない環境だった。強固な経済基盤は政権の存続にとって大きな要因だ」

 ――2009年に民主党が政権を獲得します。

 「システムの力というものは、こんなにも早く働くのかという気持ちだった。ただ、政策を巡る実のある論議に裏付けられていたとは見えなかった。オウンゴールの印象が強かった」

政党経営に問題

 ――小選挙区制になって政治家が小粒になったとの声があります。

 「政党の経営力の問題だ。支持率が下がるとトップを入れ替えるとか、最後は分裂という話になる。(議員の育成を担っていた)派閥が弱まるのはわかっていたのに『制度が悪い』ということ自体が無責任だ」

 ――自民1強体制は長続きしますか。

 「自民党が強いのは確かだが、基盤が拡大しているかというとそんなことはないかもしれない。民主党に勝ったときの比例代表の得票は負けたときよりも多くない」

 ――官僚主導から政治主導に変わりました。

 「政治主導とは政治家主導だと多くの政治家が思ってしまっている。問題は政権党が公約で約束したことに沿って行動するかどうかだ。政治家と役所の役割分担は非常に難しい問題だ。大臣・副大臣・政務官チームと役所チームがどうつながるかをもう少しルール化しないといけない」

 ――「改憲か護憲か」は戦後政治の大きなテーマです。

 「国会に憲法審査会ができ、国民投票法もできた。憲法を扱う正規ルートができたのだから、これからはあまり解釈は変えずにいくのか。かなり重要な境目に来ている。最後は国民に判断してもらう形でやるわけだから、発議する国会は1票の格差が小さくなくてはいけないとか、いろんな問題が起きてくる」

 「もう一つは憲法裁判所が必要になるのではないか。具体的な訴訟事案を前提として付随的に憲法判断するいまの仕組みでよいのか。立法権の上に立つ裁判所みたいことになるかもしれない」

(聞き手は編集委員 大石格)

 ささき・たけし 政治学者。東大教授や学長を歴任した。政府の選挙制度審議会で委員を務め、衆院への小選挙区制導入を主導した。著書に『いま政治になにが可能か』など。73歳



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