戻るか 外国勢の日本株買い 自社株買い・増配に注目 2016/04/06 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のマネー&インベストメント面にある「戻るか 外国勢の日本株買い 自社株買い・増配に注目」です。





 年初から大きく下げている日本株相場。最大の売り手が海外の投資家だ。1月以降、12週連続で売り越しており、この間の累計売越額は5兆円に上る。海外投資家はこれからも日本株を売り続けるのか。それとも売りは一巡し買いに転じるのか。波乱の新年度相場の先行きを見る上で、海外投資家の動向が焦点になる。

 3月中旬、ニューヨーク・ウォール街の米証券業金融市場協会(SIFMA)のビルに、日本の証券界の3トップが集結していた。日本証券業協会の稲野和利会長、金融庁の森信親長官、日本取引所グループの清田瞭最高経営責任者(CEO)の3人だ。

 海外投資家の日本株売りが止まらない中、米国の機関投資家向けに日本株の魅力を訴えるセミナー「日本証券サミット」が開催された。SIFMAと日証協が共同主催するセミナーはこれが8回目だが、日本からこれだけの顔ぶれがそろうのは初めてだった。

 

ファンド廃業響く

 稲野会長は「日本企業は国外で企業を買収するケースが多い。投資先がない場合は株主に還元する企業も増えている」と指摘。「アベノミクスによる経済改革は着実に進んでいる」(森長官)、「マイナス金利は日本の経営者に意識改革を促すだろう」(清田CEO)など、3首脳からは日本株の魅力を訴える発言が相次いだ。

 年初からの日本株を売った海外投資家のうち、中心的な存在だったのが、産油国の政府系ファンドと米国を中心とするヘッジファンドだ。オイルファンドは原油価格が1バレル26ドルまで下げる過程で財政が悪化し、含み益のある日本株の売却を急いだ。

 2015年はヘッジファンドの廃業が900社を超え、08年のリーマン・ショック以降で最大となった。業務を停止したヘッジファンドは顧客に返金するため、利益の出ていた日本株とドル資産を売却した。これが円高・株安の要因になった。

 これらの売りは一段落したとみられるが、ここから先、海外投資家は再び日本株を買うのだろうか。日本証券サミットには米国のヘッジファンドや長期投資家など約120社、200人が参加した。

 こうしたセミナーに参加するくらいだから、もともと日本株に関心はあるのだが、5、6社の担当者に聞いたところ、日本株への関心は筆者が思っていたよりも高かった。

 彼らとの会話で最も多く出てきた単語は「コーポレート・ガバナンス」だ。要は「株主のためにしっかり働いてくれる企業なら買いたい」。円安だから自動車、原油安だから化学といった従来型の銘柄選別の発想はない。業種より個別企業、中でも株主価値の向上に熱心な企業を選別し、投資しようとしている。

 在ニューヨークのあるヘッジファンドの運用責任者は、「マイナス金利となり、例えばソフトバンクのように1~3月の間に大型の自社株買いを決めた企業は買い。逆に資本コストが高くなるのに、転換社債を発行して資金調達する企業は売り」と語る。

 モルガン・スタンレー・ホールディングスのジョナサン・キンドレッド社長も、「自己資本利益率(ROE)の向上や増配などに手元の現金を使う企業は注目」という。

 3年前、安倍晋三総理が「バイ・ジャパン、バイ・マイ・アベノミクス」と語りかけた時のような、極端な割安感に裏打ちされた総上げ相場は望むべくもない。海外投資家は銘柄を吟味し、選別した上で、日本株買いを再開しようとしている。そのフィルターとなるのが「企業価値の向上に熱心な企業かどうか」だ。

 日本証券サミットに先立ち3月初、東京都内で大和証券が主催する日本株投資セミナーが開かれた。参加した海外投資家は60社、400人と昨年から社数、人数とも1割以上増えた。このセミナーでは日本企業と海外投資家が直接、対話をする機会を設けている。

債券と利回り格差

 日本企業400社が海外投資家と1対1で面談し、自社の魅力を訴えた。海外投資家から面談希望が多かった上位企業は楽天、花王、村田製作所、アルプス電気、デンソーなどだ。いずれも自己資本利益率が高く、配当にも熱心な企業で、当時は割安感があった。

 大和証券の日比野隆司社長は「増配企業は増えている。マイナス金利によってイールド・スプレッド(株式と債券の利回り格差)が一段と拡大し、日本株の魅力は高まる」と指摘する。

 米国テキサス州の長期投資家、エンプロイーズ・リタイアメント・システムの最高投資責任者、トム・トゥール氏は、「高水準の配当を継続できるかどうかが重要」とみている。高配当を続けるには、安定した業績や変わらぬ株主還元の姿勢を維持しないといけない。

 海外投資家が配当に注目し、日本株の再投資に動く――。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の芳賀沼千里チーフストラテジストも、そんなシナリオを想定する1人だ。海外投資家の動向に詳しい芳賀沼氏は、「3月に入って動きが出てきた」と語る。

 1~2月に日本株を売却し、現金にしていた投資家が3月に入って高利回り社債を購入し始めたという。「徐々にリスクを取り始めており、高利回り債の次に買うのが高配当株ではないか」(芳賀沼氏)。4月以降、再び海外投資家の日本株買いが戻ってくれば、株価底入れの機運が出てくるだろう。

(編集委員 鈴木亮)



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