支配権争い時の増資 資金調達の合理性カギ出光、議論に一石経営 陣の説明責任増す 2017/7/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の法務面にある「支配権争い時の増資 資金調達の合理性カギ出光、議論に一石経営陣の説明責任増す」です。





 出光興産は20日を払込日とする1200億円規模の公募増資を実施した。昭和シェル石油との合併に反対して新株発行の差し止めを求めていた創業家の即時抗告を東京高裁が棄却したためだ。一連の問題は、大株主の影響力低下を伴う増資がどこまで認められるかという議論に一石を投じた。

裁判所の決定により、出光興産と昭和シェル石油の合併は前進(横浜市中区)

 今回はっきりしたのは、資金調達という主要目的に必要性・合理性があれば、仮に支配権を維持する目的が含まれていたとしても、それが主目的でない限り裁判所は差し止めないという点だ。牛島信弁護士は「増資の理屈が通っていれば裁判所は認める」と話す。

 裁判所は出光の増資について「支配権を巡る実質的な争いで自らを有利な立場に置く目的が存在した」と創業家の影響力を低下させる目的があったとした。この目的自体は不当となる。

 一方で、増資目的のうち借入金の返済については必要性・合理性があると認めた。創業家の影響力低下と資金調達という目的が併存するとし、総合して「主要目的が不当とは認められない」と判断した。中村直人弁護士は「新株発行の主要目的ルールをそのまま当てはめた判断だ」と話す。

 出光は株主総会の数日後の取締役会で増資を決めた。浅見隆行弁護士は、これが「裁判所が『増資後直ちに合併承認議案を臨時株主総会に諮る恐れが高いと認められない』と判断する根拠になった」ともみる。

 もっとも、資金調達の使途を示せば全て問題なしとするわけではない。裁判所は増資目的のうち、戦略的な投資については新株発行で資金を調達する必要性・合理性を認めなかった。

 増資で創業家の持ち株比率は株主総会で拒否権を持つ3分の1超から2割台に下がる。合併作業は進みやすくなるとの見方が多い。

 そこで、もう一つの疑問が浮上する。経営方針に反対する大株主がいる場合、合理的な理由がある公募増資ならば今後も認められるのか、ということだ。

 議論は分かれる。遠藤元一弁護士は「公募増資は第三者割当増資に比べ、経営陣に反対する株主の影響力を弱める確実性が弱いと高裁が言及したことは、今後の司法判断に影響を与えそうだ」とみる。これに対し島田邦雄弁護士は「今回は裁判所が認めるギリギリの事例だったという印象だ」とし、「今後、他の案件でも『公募増資なら増資は認められる』という前例になるとは思わない」と話す。

 会社法に詳しい別の弁護士は「借入金がない大企業はほとんどなく、借入金返済目的の増資が認められるなら『何でもあり』というのとほぼ同じだ」と、似た例が続くことを危惧する。

 突き詰めれば「会社は誰のものか」という長年議論されてきたテーマに結びつく。所有という意味では株主のものだが、長期的な成長のために何をすべきかを考えるのが株主総会で選任された経営陣の責務だ。増資するなら、成長への道筋を明示する必要がある。

 持ち合い解消で安定株主が減るなか、大株主と経営陣が対立する例は今後も増えそう。中村弁護士は「経営陣は『合理的な経営をしている』と理解してもらう努力を、これまで以上に尽くす必要がある」と話す。



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