攻めるプーチン(下) 巧みな社会統制 愛国主義で奉仕求める 2013/12/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「攻めるプーチン(下) 巧みな社会統制 愛国主義で奉仕求める」です。





 12月初め、クレムリン(大統領府)に一通の速達郵便が届いた。「国家資産を管理する連邦機構に改善措置を命じてほしい」。プーチン大統領にこう直訴したのは、大統領自身がリーダーとなって6月に正式に旗揚げした社会団体「国民戦線―ロシアのために(ONF)」のボロネジ州支部だ。

全国に監視体制

 肥沃な黒土が広がる中西部ボロネジ州で、連邦機構が5000ヘクタールの広大な国有農地を突然競売にかけた。約200人の農民が抗議したが、無視された。ONFが助け舟を出し、連邦機構の「無関心と怠慢」を糾弾した。

 「我々には大統領に直接訴える手段がある」。ONF州支部のワシリー・ポポフ共同議長は語る。直訴を受け、連邦機構は直ちに改善策の検討に入ったという。プーチン氏は10月末までにONF支部を全国に張り巡らし、地方の行政組織や支配層の活動を厳しく監視する体制を築いた。

 12月9日、報道界に激震が走った。大統領府がソ連時代から世界にニュースを発信してきた伝統ある通信社の再編を発表。国営メディアの中で比較的自由な報道方針で知られた同社に「ロシアの国家的利益を守るため」、海外への宣伝機関になるよう命じた。

 国家元首に返り咲いてから一年半余りのプーチン大統領が社会への統制色を強めている。2011年末から盛り上がり、一時はモスクワで10万人以上の抗議デモを起こした「反プーチン運動」を締め付け、野党勢力を抑え込んだ。13年は政権基盤の安定へ反転攻勢の年になった。その波は教育やビジネスなどあらゆる分野に押し寄せる。

 教育問題ではばらばらだった歴史教科書の記述内容を新たな統一概念に基づき編さんするよう指示した。「社会状況の安定」「経済危機の克服」など00年に始まった「プーチン体制」の肯定的側面を強調させた。経済分野では法人税など税関連の事件で起訴できる権限を捜査機関に与える法案を提出。ビジネス界ににらみをきかせた。

 プーチン流統治を正当化するのは愛国主義だ。大統領は19日の記者会見で「愛国主義は国家理念を前進させるためにとても重要だ」と主張。国への奉仕を求めた。「保守主義者」を自認するプーチン氏の信念でもある。

経済低迷足かせ

 大統領にとって経済の低迷が足かせとなる。過度の資源依存で13年の成長率は1.4%に下がる見通しで、投資の刺激が欠かせない。プーチン大統領が19日、政権と対立し服役中の元石油王ミハイル・ホドルコフスキー氏の恩赦を表明したのも、投資環境への内外の懸念を取り除こうとしたためだ。

 「反プーチン運動」の核となった都市部の中間層や知識層は冷淡だ。リベラル派の有力ニュースサイト「ガゼタ・ル」はONFを政権に従順でない人に対する「圧力の道具」と批判する。世論調査機関レバダ・センターによると、次期大統領にプーチン氏を「望まない」との回答は45%で、「望む」の33%を上回る。

 モスクワ支局 石川陽平、田中孝幸が担当しました。



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