政治新潮流(2)新重商主義 「1社支援」いとわず 外交戦略にもリンク 2016/01/03 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合・政治面にある「政治新潮流(2)新重商主義 「1社支援」いとわず 外交戦略にもリンク」です。





 「グローバルな大競争時代に企業への後押しをためらっちゃいけない」。2012年12月、数日後に首相就任を控えた安倍晋三氏は、現首相秘書官の今井尚哉氏らを前に、インフラ輸出戦略を新政権の政策の柱とするよう指示した。官民をあげて国際的なプロジェクトを獲得する安倍流「新重商主義」が始まった。

敗北を教訓に

 苦い記憶があった。民主党政権下の09年12月、アラブ首長国連邦(UAE)の原発建設の入札で、日立製作所など日米企業連合が原発受注実績のなかった韓国勢に敗れた。企業任せだった日本に対し、韓国は政府を挙げて韓国電力公社に受注を勝ち取らせた。

 一つの業界で国際競争力のある企業が1社に絞れる韓国に比べ、一つの業界に有力企業がひしめく日本。長らく「オールジャパン」の名の下で、政府が業界内の個別企業への重点支援をためらってきたのが敗因だった。

 これを転機に民主党の鳩山政権は翌年、パッケージ型インフラ海外展開関係閣僚会合を立ち上げ、企業の海外インフラ投資への支援策を拡充。閣僚のトップセールスにも乗り出したが、党内に大きな壁があった。企業・団体献金の廃止を訴えてきた複数の党幹部らが、特定企業と緊密な関係を構築するのを嫌がったのだ。

 新たな潮流は安倍政権で生まれる。「日本のインフラ企業にとって海外はまだまだ『これから』の市場。政府や公的機関が事業の個別案件レベルに関わり、官民連携を促すしかない」。国際協力銀行(JBIC)の前田匡史専務は安倍政権の方針を踏まえて、企業に海外のインフラ投資案件を紹介し企業連合の仲介役を担った。前田氏自身、民主党政権の内閣官房参与としてインフラ戦略を進めたが、安倍政権になり環境は大きく変わった。

 日本のインフラ受注実績は10年の約10兆円から13年に16兆円に増えた。1基あたり5000億円ともいわれる原発の場合、稼働後の保全作業も含めると、国内で約500社ある原発関連メーカーに商機は広がる。

バランス腐心

 もっとも安倍政権は特定企業の支援の裏で、ライバル社へのバランスにも腐心した。原発ではトルコは三菱重工業、リトアニアは日立製作所、カザフスタンは東芝と地域ごとに目配りした。世界貿易機関(WTO)のルールに抵触する懸念もなかった。

 「新重商主義」戦略は15年にさらに花開く。安倍首相とインドのモディ首相との会談はこの1年間で立ち話を含めて5回。日本側の積極攻勢で新幹線受注にこぎ着けた。次の狙いは米国市場。日本政府は東海旅客鉄道(JR東海)を全面支援しテキサス州での高速鉄道計画に加え、リニア新幹線の米東海岸への輸出も視野に入れる。

 ライバルの動きも活発だ。インドネシアの高速鉄道の受注は中国に奪われた。次に競合しそうなのはマレーシアとシンガポールを結ぶ高速鉄道。「米国が日本の技術を受け入れれば新興国へのインパクトは大きい」。首相周辺は中国との受注競争に勝つためにもJR東海の米国市場への参入支援が重要とみる。

 最大のライバル中国にどう立ち向かうのか。安倍流「新重商主義」は外交戦略につながる重要性を帯びる。



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