政治新潮流2016 (5) ナショナリズム 外交、世論の重み増す 対中韓ロ、内向き志向強く 2016/01/08 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の政治面にある「政治新潮流2016 (5) ナショナリズム 外交、世論の重み増す 対中韓ロ、内向き志向強く」です。





 外交は内政の延長線上にある。日韓関係の最大の懸案だった旧日本軍による従軍慰安婦問題は昨年末の外相会談で合意。ただ韓国内には不満もあり、日韓両政府は国内のナショナリズムに揺れる。今年は選挙など政治イベントを控える国が多く、各国首脳にとって世論への意識が強まる気配だ。増幅するナショナリズムが外交の大きな変数になりそうだ。

6日、日本政府に抗議する「水曜集会」が24年を迎え、1000人が集まった(ソウルの日本大使館前)

くすぶる不満

 6日、ソウルの日本大使館前で日本政府に抗議する「水曜集会」が24年を迎え、主催する元慰安婦支援団体のほか、野党議員、学生、一般市民ら約千人が集まった。

 大使館前に設置された慰安婦問題を象徴する少女像の周りでは、韓国政府が「適切に解決されるよう努力する」とした日韓両政府の合意を批判し、像の移転に反対する大学生らが座り込みを続けている。

 韓国内の世論調査で、日韓合意への賛否を年齢別にみると、50代以上は肯定的な評価が目立つ一方で、40代以下は否定的な見方が多い。韓国は4月に総選挙を控える。さらに日本とどう協力を築けるかは、世論に配慮せざるを得ない。

 日本は夏に参院選がある。安倍晋三首相に近い保守系議員は「これ以上、韓国に譲ったら選挙に影響が出た」と話す。首相のフェイスブックには「単なるポピュリズム」「保守支持者をこれ以上落胆させないようお願いします」など反発が相次ぐ。少女像が早期に撤去されないと不満は増幅しそうだ。

 日中関係や日ロ関係も世論に揺れやすい。

 昨年11月22日の日米中など18カ国が参加する東アジア首脳会議。「頼むからおとなしめに言ってほしい」。中国政府は事前の事務レベルの協議で、南シナ海での人工島造成を巡って日本側に安倍首相が発言を抑えるよう求めてきた。会議で公式に中国を批判してくれば、世論をにらんで中国政府も強く反論しないといけないからだ。

愛国心が支え

 昨年9月21日夜、ロシア外務省。ラブロフ外相は岸田文雄外相と夕食を共にしながら「北方領土問題を議論したと言ったら国会は大変なことになる」とつぶやいた。ラブロフ氏は事前の記者会見で「領土問題は議論していない」と述べたのを釈明したのだ。岸田氏も「領土問題を議論しなかったと言ったら日本の国会は持たない」と応じた。

 冷戦時代はイデオロギーが国際社会の対立軸になり、国内で求心力を保つ手段にもなった。細谷雄一慶大教授は「10年ほど前からナショナリズムが外交に与える影響が強まり、日本のアジア外交を難しくしている」と語る。日本のナショナリズムが外交を左右し始めたのは、国際情勢を見ると中国が台頭し、経済の面では日本がデフレに苦しんだ時期と重なる。

 国内総生産(GDP)で中国は日本をさらに引き離す勢いだ。慰安婦問題で成果を得た韓国では日本との対等意識が強まる可能性もある。

 イスラム過激派による相次ぐテロを受け、世界では排他主義の風が吹く。ポピュリズムも台頭し、米共和党の米大統領候補指名争いでは、イスラム教徒の入国の全面禁止を提案した不動産王ドナルド・トランプ氏が首位に立つ。フランスでは反移民を掲げる極右政党が躍進。世界の各国でナショナリズムとの間合いが外交の焦点になる。

(おわり)

 佐藤理、島田学、坂口幸裕、小嶋誠治、酒井恒平、ソウル=峯岸博が担当しました。



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