政策ズームイン 北方領土、新アプローチの成否は 出ては消える解決策 「返還方法」「環境整備」カギ 2016/06/26 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の日曜に考える面にある「政策ズームイン 北方領土、新アプローチの成否は 出ては消える解決策 「返還方法」「環境整備」カギ」です。





 安倍晋三首相が日ロ関係の最大の懸案である北方領土問題の解決に意欲を示している。ロシアのプーチン大統領と合意した「新たなアプローチ」での交渉が始まった。日本と旧ソ連(現ロシア)が国交回復した日ソ共同宣言から今年10月で60年。領土交渉は解決策が浮かんでは消え、いまだに決着がつかない。新たなアプローチは成功するのだろうか。

 22日、日ロ両政府は外務次官級の平和条約締結交渉を都内で開いた。安倍首相とプーチン大統領が5月6日の会談で北方領土問題を巡り合意した「新しいアプローチ」に基づく解決方針を踏まえ、対話を促進する考えで一致した。

内容は明かさず

 日本側によると、双方は「新たなアプローチ」の考え方をそれぞれ示したが、両政府とも具体的な内容は明らかにしていない。政府関係者は「互いに世論の反発を招きかねない内容を含んでいるからだ」と解説する。解決策が明るみに出て、世論の反発を浴びて頓挫する事態を日ロ双方ともに懸念している。

 戦後の領土交渉を振り返ると、絶えず「新しいアプローチ」を探る展開だったといえる。大きな考え方としては(1)北方領土を具体的にどう引き渡すかの返還方法(2)交渉を加速するための環境整備(3)この2つの組み合わせ――のいずれかだ。

 返還方法を巡り、日本政府は冷戦期に「4島一括返還」の立場を貫いてきた。法的・歴史的事実に照らして見ても、4島は日本固有の領土だとの考えに基づく。一方、ロシアは第2次大戦の結果として4島統治の正当性を主張。互いが入り口で原則論に終始し、交渉は進まなかった。

 冷戦崩壊で状況に変化が訪れた。日本政府は打開策として91年、「4島の帰属が確認されれば、実際の返還の時期や態様、条件について柔軟に対応する」との方針に転換した。

 「時期」は長い年月をかける、「態様」は領有権と施政権を分ける――。こんな解決策を生み出したのが98年。橋本龍太郎首相は静岡県・川奈でのエリツィン大統領との会談で「択捉島とウルップ島の間に国境線を引き、4島の施政権は当面ロシアに残す」との案を示した。しかしロシアは拒否した。

「2島先行」浮上

 次に「4島」を分ける考え方に傾く。4島一括にこだわれば前進しないとの危機感から、段階的解決論という別のアプローチが生まれた。両国の議会が批准した唯一の法的拘束力を持つ条約である56年の日ソ共同宣言は、歯舞・色丹の引き渡しを明記しており、2島の返還から事態を動かす出発点になる。

 森喜朗首相は2001年、イルクーツクでプーチン大統領と会談し、歯舞・色丹の返還と択捉・国後の帰属の並行協議を提案した。「2島先行返還」の考え方につながる。しかし直後に森氏は退陣。小泉純一郎氏が首相に就くと、歯舞・色丹の引き渡しでの幕引きにつながりかねないと警戒。先行返還論は棚上げされ、交渉は停滞期に入った。

 領土問題を進展させる環境整備でも、さまざまなアプローチが試された。冷戦期、日本は「政経不可分」の方針のもと、領土が前進しなければ経済関係も動かせないとの立場を取ってきたが、冷戦終結でスタンスを変化。政治と経済の関係が同じように発展する「拡大均衡」や、安全保障や地域交流など多分野での関係強化を目指す「重層的アプローチ」を打ち出した。

 98年の川奈会談では、返還方法と環境整備を組み合わせた包括的アプローチを採った。日本側が国境画定の提案をする一方、投資やエネルギー開発の協力を強める「橋本・エリツィンプラン」の拡充で合意。「新たなアプローチ」といっても、選択肢は限られる。日ロ関係筋は「経済協力や安全保障を絡めることに目新しさはない」と指摘する。

 領土問題で安倍首相と定期的に意見交換する新党大地の鈴木宗男代表は「首相の腹は『2+α』。αで新しい知恵を出すのが新たなアプローチだ」との見方を示す。まず歯舞・色丹の返還を目指し、国後・択捉の帰属や経済協力、元島民の自由往来などの議論を加味していく手法が念頭にある。領土交渉の突破口を開くには、安倍首相とプーチン氏の両首脳がぎりぎりの判断を迫られることになる。



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