断絶を超えて Disruption (中) 漂う百貨店 ネット ・リアル、相克の先 2017/6/22 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「断絶を超えて Disruption (中) 漂う百貨店 ネット・リアル、相克の先 」です。





 「現場の考えを聞かせてほしい」。5月17日、伊勢丹浦和店(さいたま市)の会議室。三越伊勢丹ホールディングス(HD)社長に就任したばかりの杉江俊彦氏(56)は物静かないつもの口調で同店の6人の幹部に語りかけた。

 大西洋前社長(62)の辞任のきっかけになった4店舗の閉鎖発言。社員の中にはいつ自分たちの店舗が閉鎖されるかとの不安が残る。火消しに回った杉江氏は現場の不満の言葉一つ一つにうなずきながら、切れた信頼関係の修復に全国をまわる。

 ネット販売がリアル(実在)店舗を駆逐する「断絶」。米国では大手シアーズ・ホールディングスが150店の閉鎖を決めた。メーシーズも年内に68店を閉め1万人を削減する。クレディ・スイスは今年、米国で8640店の小売店が閉鎖されると予想する。

 その波は日本にも押し寄せる。昨年の百貨店売上高は36年ぶりに6兆円を割り込んだ。一方、電子商取引は5年後には現在より10兆円増え、26兆円に達する見通しだ(野村総合研究所調べ)。

 ネット通販の進化は急だ。古着、使いかけの化粧品、流木――。大学在学中から起業家の道を歩んだ山田進太郎会長(39)率いるメルカリ(東京・港)。誰もが気兼ねなく出品し即時に買えるフリーマーケットアプリは通常は出回らないモノが並んでいる。

 三越伊勢丹を百貨店の盟主たらしめたのは有能なバイヤーの存在だ。消費者が知らない魅力的な商品を仕入れ、店頭に並べる。だが、ネットで情報があふれる今、知らない商品を見つけるのは難しくなった。サービス開始から4年で日米7千万人の顧客網を築いたメルカリの勢いに消費の構造変化がくっきりと映る。

 4月下旬。杉江氏はオープン直後の「ギンザシックス」を訪れた。

 旧松坂屋銀座店の跡地にたつギンザシックスは百貨店の皮肉な歴史を映す。2008年に三越と伊勢丹が統合し、松坂屋ホールディングスと大丸の統合会社であるJ・フロントリテイリングは規模で大きく離された。太刀打ちできないとみたJフロントは「脱・百貨店」を掲げテナントを誘致し賃料を稼ぐ不動産事業への転換を打ち出した。だから、ギンザシックスに家主の看板はない。

 「大家」に転じたJフロントは今では百貨店以外で連結営業利益の4割を稼ぐ。時価総額では今年初めて三越伊勢丹を抜いた。5月公表の三越伊勢丹の中期計画で杉江氏は不動産事業の強化を示唆した。10年前には歯牙にもかけなかったJフロントを、三越伊勢丹は後追いするのだろうか。

 時間は限られている。16日、米アマゾン・ドット・コムは高級スーパーのホールフーズを137億ドルで買収すると発表した。アマゾンだけではない。メルカリの山田会長も「人と人が会って心を通わせるようなリアルな体験が重要になってくる」と言う。

 江戸時代、三越伊勢丹の源流、越後屋は「現金払い」「定価販売」などの斬新な商法を導入。既存の呉服店は一気に廃れた。それから300年。断絶を超える新たな物語を作る締め切りが三越伊勢丹に近づいている。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です