新・金融立国アメリカ(4) 草の根融資、若者に力 進学を後押し、未来開く 2015/07/19 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「新・金融立国アメリカ(4) 草の根融資、若者に力 進学を後押し、未来開く」です。





 高校中退の元ホームレスがこの秋、米国の名門ハーバード大学院に進学する。こんな「アメリカンドリーム」を実現したのはトニカ・モーガンさん(32)だ。

わずか2カ月でハーバード大学院の進学資金を手にしたモーガンさん(ゴー・ファンド・ミー提供)

 モーガンさんは14歳で家を飛び出し、4年間のホームレス生活を送った。17歳で高校を中退。その後、公共政策の非営利組織で働きながら、10年かけて学士号を取った。ハーバードでは教育を専攻する。

 合格後に立ちはだかったのは7万ドル(約860万円)もの費用だ。持ち物を全て売っても工面できない。「お金を準備できるまで入学を待ってもらえませんか」と頼んだがハーバードは「ノー」。高校中退の彼女が使える奨学金はなかった。

 モーガンさんを救ったのは、個人や法人を対象にインターネット経由でお金を融通する「草の根金融」大手のゴー・ファンド・ミーだ。「学費を払えるよう助けをください」。同社で寄付を募り、わずか2カ月で8万ドルも集めることができた。

 2010年の創業から同社で集めた教育資金は約24億円に上る。医療費や急ぎの出費、冠婚葬祭でも使える。集まったお金の5~10%を手数料として取り、企業価値は700億円を超えた。

 大手金融や公的な機関に頼らずに、ネットでお金の出し手と使い手をつなぐ草の根金融。日本で長く続いてきた庶民の相互扶助「頼母子講」の現代版として米国で急拡大している。例えば「個人間融資」は米国をはじめとする世界の市場規模が15年に8兆円弱となり、前年の7倍に膨らむと見込まれる。

 仏保険大手のアクサは2月に270億円の投資ファンドをつくり、ニューヨークとシリコンバレーに拠点を開いた。投資先は「個人をつなぐ『現代の頼母子講』を提供する企業に注目している」(幹部)と明快だ。

 草の根の対極にあるウォール街。大手投資銀行のゴールドマン・サックスはリーマン・ショック直後の09年、零細事業の経営者を対象にした総額600億円強の支援プログラムを始めた。約1300人が教育などで支援を受けた。

 ニューヨーク・マンハッタンでカフェを営むミシェル・クルスさん(42)。経営難に陥っていた彼女は10年、ゴールドマンの助けで地元の大学に半年通い、経営の基礎を身につけた。卒業後、ローンを有利な条件で借り換えることができた。カフェの売り上げを年間で5割弱も増やした。

 「ゴールドマンの支援がなければ、今はなかったでしょう」とクルスさん。息を吹き返したウォール街は社会還元にも本腰を入れ始めた。

 「過去最高の寄付額」。著名投資家でヘッジファンドを主宰するジョン・ポールソン氏は6月、ハーバード大に約500億円を寄付した。08年のリーマン危機時に空売りで巨万の富を築いたウォール街で伝説の人物だ。「ハーバードの教育が自分の道を開いてくれた」と理由を説明した。

 米国では大学の学費が高騰し、多くの若者が多額の借金を強いられる。学生ローンの残高は150兆円に上り、この10年間で約4倍に膨らんだ。卒業後もなかなか完済できず、16兆円は返済が延滞している。現代の頼母子講が若者の将来を開く大きな力になる余地はまだ大きい。

=おわり

 佐藤大和、兼松雄一郎、山下晃、平野麻理子が担当しました。



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