旅行者民泊、法の「想定外」空き部屋貸し出し、広がるネット仲介 2015/07/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の法務面にある「旅行者民泊、法の「想定外」空き部屋貸し出し、広がるネット仲介」です。





 ネットの仲介サイトを通じて不動産やクルマなどを貸す「ソーシャルシェアリング」のビジネスが広がっている。ただ自宅の空き部屋を旅行者に貸す不動産シェアリングサービスは、場合によっては貸主が旅館業法に抵触する可能性があるなど法務的な課題も抱えている。政府も規制の見直しに乗り出した。現状と今後の課題について分析する。

スペースマーケットは、現時点では基本的に宿泊物件を扱っていない(古民家を利用して開いたヨガ教室)

(児玉小百合)

 JR新宿駅から徒歩4分。ベッドは2つ。貸し切りで1泊あたり8456円――。

 米国に本社を置く「Airbnb」(エアビーアンドビー)の日本版サイトには、主に旅行者向けに一般ユーザーが貸し出す部屋の紹介が並ぶ。過去に利用した旅行者からの口コミも読める。

 2008年設立のエアビーアンドビーは世界190カ国、3万4000都市以上で事業を展開。利用者数は延べ4000万人に上る。非上場だが、米紙によると企業価値は優に1兆円を超えるという。同社などの不動産シェアサービスの広がりを受け、英国では自宅の貸し出しが大幅にしやすくなる新法が施行された。

 日本政府が目指す訪日外国人客数は30年に3000万人(14年は1341万人)。円安を追い風に観光客は急増、すでに東京など都市部ホテルの稼働率は高水準だ。20年の五輪開催を待たずに宿泊施設が不足気味になるなか、既存の遊休不動産を有効活用できる不動産シェアは課題解決の一手段になるともいわれる。

 一方で、現状では法的な課題を抱えるビジネスモデルでもある。厚生労働省によると「旅館業法上、料金を取ってヒトを宿泊させるのは『旅館業』に当たり、物件の貸主は都道府県知事から営業許可を取る必要がある」(生活衛生課)。しかし一般の貸主が床面積や暖房設備など規制をすべてクリアし、許可を得ることは現実的ではない。

貸主男性を逮捕

 実際に14年5月、無許可で自宅の部屋を貸した外国人男性が、再三の指導に従わなかったとして旅館業法違反容疑で逮捕された。エアビーアンドビーの仲介ではなかったが、厚労省は同年7月、都道府県に「自宅でも許可が必要」と通知した。

 また賃貸物件では通常、賃貸借契約に「転貸禁止規定」が含まれ、大家の許可なしにまた貸しはできない。

 事業者でも14年、ヤフーが宿泊予約サイト上で個人が所有する別荘のシェアリング仲介サービスを始めたところ、貸主が旅館業法に抵触すると指摘され、休止した。

 こうした仲介サービスで事業者は貸し手と借り手が出会う場を提供する立場であり、個々の賃貸借のトラブルについては責任を負わないのが原則だ。利用規約でもそう定められている。

 だが森亮二弁護士は「場を提供している以上、注意喚起の義務などはあり、完全に責任を逃れられるわけではない」と言う。エアビーアンドビーもサイト上で法的注意点を指摘しているが、利用者の良識に委ねられているのが実態だ。

 こうした状況を関係者はどう見ているのか。全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会の清沢正人専務理事は「感染症などの対策はどうなるのか。対価を得るなら、せめて簡易宿泊所程度の規制は受けるべきだ」と話す。

 シェアサービスの拡大を望む側はどうか。古民家などの時間貸しサービスを手掛けるスペースマーケット(東京・新宿、重松大輔社長)は現在、宿泊を含まないサービスを展開しているが、「法令で認められれば宿泊も手がけたい」と話す。

結論には時間

 旅館業法の規制対象でない農家での宿泊をサイトで仲介する百戦錬磨(仙台市)。上山康博社長は「民泊は大きなビジネスチャンス。ルールをきちんと定め、事業者がフェアに競争できるようにしてほしい」と訴える。

 ネットを生かした不動産サービスに詳しい水野祐弁護士は「旅館業法はネットで個人が遊休不動産を活用するような状況を想定していない。新しい価値観や文化に基づくサービスに応じた解釈や運用、法改正が必要だろう」と指摘する。

 すでに国家戦略特区では主に外国人の宿泊を想定した旅館業法規制の緩和策が打ち出されている。だが実施に必要な条例を制定した自治体はまだない。6月末に閣議決定された「日本再興戦略」では「ネットによる民泊サービスについて実態の把握などの検討を行う」とされた。ただ結論を出すのは「16年度中」(厚労省)といい、まだ時間がかかる見通しだ。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です