日本の革新力(4)活路はどこに いびつな起業小国 マネー生かし 新陳代謝 2017/11/4 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「日本の革新力(4)活路はどこに いびつな起業小国 マネー生かし新陳代謝」です。





 「米テスラを超えてみせますよ」。電気自動車(EV)を開発するGLM(京都市)の小間裕康社長の野心的な計画に128億円を投じたのは、香港の投資会社オーラックスホールディングスだった。今年8月のことだ。

GLMが開発中のEVスポーツカー。香港企業が出資する(京都市)

 想定価格4000万円の超高級スポーツEVを開発するGLMは、2010年設立の京都大学発のスタートアップ。海外の大手自動車メーカーも資本参加に意欲を示した気鋭の新興企業だが、日本勢の反応は鈍かった。「投資提案はせいぜい数十億円。投資判断も遅かった」(小間社長)

 いつの時代も、イノベーション(革新)は常識やしがらみにとらわれない新興勢力がけん引する。革新力の衰えを自覚する日本の産業界でも「オープンイノベーション」を掛け声にスタートアップとの連携が広がるが、どうもちぐはぐだ。大企業がスタートアップを買収せず、少額出資を繰り返すばかりなのだ。

 米グーグルは01年以降に約200社、月1社のペースでスタートアップを含む企業を買収してきた。事業を売った起業家は新たなスタートアップの担い手となる。テスラを率いるイーロン・マスク氏は24歳の時に起業したソフト会社を大企業に売却した。得た資金で設立した次の会社を起点に「シリアルアントレプレナー(連続起業家)」の道を歩んでいる。

 日本の常識では、スタートアップは新規株式公開(IPO)で資金を手に入れる。創業者の晴れ舞台で、支え手のベンチャーキャピタル(VC)も潤う。だが小粒で上場した結果、手堅く利益を確保することに追われ、大きく成長しない例が多い。VCの投資回収の8割以上が大企業による買収である米国と対照的だ。

 日本の開業率は5%と欧米の半分程度に停滞する。起業小国と呼ばれて久しい。スタートアップ支援のクルー(東京・目黒)の伊地知天社長は「大企業による買収や大型出資が活発になれば、日本でも起業家が次の起業をしたり、投資家に回ったりするエコシステム(生態系)が動き始める」と語る。

 カネはある。上場企業3600社の手元資金は過去最高の115兆円。この5年で1.4倍に増えた。

 派手な買収劇で注目を集めるソフトバンクグループ主導の投資ファンドは10兆円規模だが、同社側の実際の資金拠出は3兆円分だ。上場企業の手元資金の半分を動かせば、ソフトバンクの投資ファンドの10~20倍の存在感がある民間投資ファンドができる計算だ。

 変化の芽はある。

 「グローバル展開のために、もっと緊密になりましょう」。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」通信のソラコム(東京・世田谷)。玉川憲社長は自らKDDIに売却を持ちかけた。「通信会社のスピード感ではビジネスモデルの激変に対応できない」。こう痛感していたKDDIにも渡りに船だった。8月に約200億円で買収した。

 オープンイノベーションという聞こえのいい言葉に安住していては革新力の再生は難しい。大企業のマネーを生かせば、新陳代謝の道筋が見えてくる。



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