日本企業の短期主義 編集委員 西條都夫 2015/08/04 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報2面にある「日本企業の短期主義 編集委員 西條都夫」です。





 「同族経営」と聞くと、どこか時代遅れの感じがして、いいイメージを持たない人が多いだろう。最近では大塚家具やロッテで親子や兄弟間の骨肉の争いが起こり、否定的な印象がさらに強まった気がする。

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 だが、実証研究によると、実は同族経営のほうがいわゆるサラリーマン経営より概して成績がいい。例えば京都産業大学の沈政郁准教授らが一昨年に発表した、日本の上場企業1000社以上を対象にした大がかりな研究によると、売上高成長率でも総資産利益率(ROA)でも同族会社が非同族会社を上回った。それも一時的な現象ではなく、40年近い長期の時間軸で比べた結果である。

 さらに興味深いのは同族企業の中でも、経営者の類型によって業績にばらつきがあることだ。

 最も成績がいいのは、いわゆる婿養子が率いる企業群だ。創業家を頂く会社でも、一族と関係のないサラリーマン(いわゆる番頭)が経営することもあれば、直系の息子や娘が経営する場合もある。だが、そのどちらよりも、創業ファミリーの一員ではあるが、実は血縁関係のない養子がトップに座ったほうが業績がいいという結果が出た。

 なぜ同族経営であり、中でも養子なのか。後者については、「同族の弱点は後継者の選択肢が限られることだが、社内外の優秀な人を選んで一族に迎え入れる婿養子の仕組みを活用すれば、それが克服できる」と沈准教授はいう。

 同族経営一般の優位性については、やはり短期主義の弊を免れ、長期的視野に立ったかじ取りができるということだろう。

 スズキの鈴木修会長といえば日本で最も有名な婿養子経営者の一人だが、およそ40年前に若くして社長になった直後に大ヒット車に恵まれた。その時こう考えたという。「自分は今後何十年も社長をつとめる。就任して早々に大きな利益を出すより、ヒット車で稼いだおカネを設備増強などの先行投資に回そう。スズキを立派な会社に育て上げて、次の世代に引き渡すのが自分の役割だ」

 こうした持ち時間の長さや構想の遠大さこそ、同族経営の強みである。日本企業の業績は堅調だが、いまひとつ突き抜け感に乏しい。デロイトトーマツコンサルティングの日置圭介執行役員は「日本企業の多くは中期経営計画を重視しすぎる『中計病』にかかっているのでは」と指摘する。

 多くの企業が策定する3~5年の中期計画はうまく使えば経営の便利な道具だが、社長任期に連動していることも多く、硬直的な必達目標になりがちだ。

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 中計の数字が一人歩きすると、会社全体がそれにフォーカスして、もっと先の長期的な視点や戦略は抜け落ちる。四半期利益に目の色を変える米株主資本主義とは少し肌合いは違うが、これはこれで将来の成長を阻害するショート・ターミズムの一種ではないか。同族経営の優位は企業一般の弱点を映す鏡でもある。



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