日本株に優待バブル 裏技でタダ取り、株価高止まり… 機 関投資家「配当を軽視」不満強める 2017/4/2 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「日本株に優待バブル 裏技でタダ取り、株価高止まり… 機関投資家「配当を軽視」不満強める」です。





 自社製品などを株主に贈る株主優待を導入する企業が続々と増えている。実施社数は1300社を超え、今では上場企業の3社に1社が実施する。「贈答好き」の国民性に合致した日本独特の制度で、優待狙いの株取引が盛り上がるのは3月末の市場の風物詩だ。ただ配当を重視する機関投資家は不満を強めており、行き過ぎの弊害を指摘する声も増えてきた。

株主に贈られる優待品を集めた展示をみる人たち(3月24日、東証)=柏原敬樹撮影

 「こんなお得な制度は他にない」。長野県に住む30歳代の主婦がこう話すのは、8年前に100株を購入したイオンの株主優待だ。買い物が3%引きになる優待カードをもらえる。「毎日の買い物はイオン一択で、年間節約額は約5万円。銀行の利息がすずめの涙の時代に、最強の節約術だ」。株価は購入時から2倍になったが、株を売るつもりはないという。

 株主優待を企業が導入するのは、長野県の主婦のように株を長期に持ってくれる株主を増やしたいからだ。そんな企業側の意図をよそに、優待の無料獲得を狙った短期の株取引が流行している。

 先週、株式市場は3月期決算企業の株主の権利が確定する最終売買日を迎えた。その1日だけ現物株を買うと同時に信用取引で同じ株に売りを出す「優待クロス取引」が盛り上がる。株価変動リスクを避けながら、優待をタダで手に入れるのを狙う株取引の裏技だ。

 都内在住の50歳の男性は「家族サービスのため今年はオリエンタルランドや日本航空など66銘柄で実施した」と明かす。問題は同じ銘柄に大人数が群がると、信用取引の売り注文に必要な貸株が品薄になり、株のレンタル料が高騰する点だ。

 アミューズメント施設のアドアーズは提携先の高級リラクセーションサロンの利用券を提供するが、4万4000円相当の利用券を得るための費用が8万4000円に跳ね上がった。株主優待マニアとして有名な棋士の桐谷広人さんが愛用するとテレビ番組で紹介され、人気に火が付いた。

 こんな優待バブルはそこかしこで起きている。ファミリーレストランのココスジャパンは、1000円相当の食事券と5%割引カードの獲得費用が1万560円に上昇。中央魚類が提供する3500円相当の水産物セットを得るには2万3400円の費用がかかった。

 海外企業では優待はごく少数だ。米国では10社に満たず、英国も30社強が実施している程度だ。

 日本だけ栄えるのはなぜか。返礼品が人気のふるさと納税と同様、お歳暮などの日本の贈答文化が普及の下地との指摘は多い。「主に投資信託経由で株に投資する欧米と違い、個人が株を直接持つ傾向が強いのも大きな理由」(米山徹幸・埼玉学園大学客員教授)だ。

 上場企業の優待総額は時価換算で約1000億円。純利益の2%にすぎないが、機関投資家の不満は大きい。個人向けに設計されており、保有が100株でも100万株でも優待内容は同じという例は多い。配当と違って機関投資家には不平等な制度とみられている。

 機関投資家の証券管理を手掛ける日本トラスティ・サービス信託銀行は「食品などのモノの優待は保管や処分に困るため、受け取りを拒否する投資家が大半」という。

 人気の優待を出す企業の株価が、企業価値に比べて高止まりしているとの指摘も出ている。例えば日本マクドナルドホールディングスは食事券の優待目的で株を持ち続ける個人が多く、株価が下がりにくくなっている。

 米マクドナルドは保有する日本マクドナルド株の一部売却を模索しているが、買い手がなかなか現れない。「実力とかけ離れている今の株価ではとても買えない」。買収を一時検討した外資系ファンドの幹部は明かす。

 優待ブームの過熱は、優待品の中身の変質にも表れている。その象徴がクオカードなど金券やギフト券の増加だ。今年は27%を占め、食品を抜いて初の首位となった。

 「個人を金券で呼び寄せるなど最近は安易に使われすぎだ」。優待ブームの火付け役であるカゴメ。制度の育て親だった同社OBの長井進・三菱UFJ信託銀行顧問は警鐘を鳴らす。行き過ぎた優待ブームは市場のゆがみを生み、それはいずれ企業自身にも跳ね返る。(川路洋助、野口和弘)



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