日米首脳会談の宿題 「価値」も語れる同盟に コメンテー ター 秋田浩之 2017/2/14 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「日米首脳会談の宿題 「価値」も語れる同盟に コメンテーター 秋田浩之」です。





 世界が注目するなか、ゴルフや食事を重ね、関係を築いた安倍晋三首相とトランプ米大統領。だが、ひとつ、やり残した大事な宿題がある。

 自由や人権といった民主主義の価値を語り合い、共有する努力だ。これがなければ、強い同盟は生まれない。

 11日夜、両首脳が宴席に着くのを待っていたように北朝鮮がミサイルを放った。トランプ氏もこうした挑発はある程度、予想していただろう。オバマ大統領(当時)から北朝鮮がいちばん切迫した脅威だと告げられていたためだ。

 米外交専門家によると、これを受け、フリン大統領補佐官(国家安全保障担当)が最近、北朝鮮にどう対処するか、ひそかに包括的な政策の検討に入っていたという。

 こうした危機にすばやく対応するうえで、両首脳が電話でも率直に話せる関係をつくれた意義は大きい。日米は尖閣諸島や東・南シナ海問題でも結束できた。

 しかし、不安が消えたわけでは全くない。日米同盟は共通の利益と民主主義の価値という、2つの柱に支えられてきた。このうち、後者の絆が確認されたようには思えないからだ。

 外国人の入国制限策などをかかげるトランプ政権は、世界から「人権軽視」との批判を浴びる。この点を記者会見で聞かれた安倍氏は「ノーコメント」で通した。

 トランプ氏を怒らせず、まず親しい友人になる。安倍氏のこんな対応が間違っていたとは思わない。ただ、このままでは本当に丈夫な同盟は育たないのも現実なのだ。

 これはきれい事ではない。人間でいえば、同じ信条で結ばれた友情は強く、苦境に耐えられる。だが、利益だけでつながる友人関係はもろく、ほかに役立つ人物が現れれば、そちらに流れやすい。トランプ氏にはそんな危うさがある。そのひとつが対中外交だ。

 「私たちは良好につきあえる過程にある」。トランプ氏は10日の安倍氏との共同会見で、中国との関係についてこう予告した。9日の習近平国家主席との電話で「非常に良い話」ができたからだという。

 あれほど厳しかった中国への態度が一変したのは、経済で何らかの秘密提案があったからかもしれない。複数の外交筋によると、中国はトランプ氏を取り込むため、ホワイトハウスに猛烈な接近を試みていた。

 中国の経済規模は日本の2倍以上。トランプ氏が実利だけを追求するなら、日本より中国との協力に魅力を感じても不思議ではない。

 最悪のシナリオはその結果、米国が安全保障で中国に譲り、アジアの安定が揺らぐことだ。

 そうならないようにするには「米中と異なり、価値も共有できる日米同盟の大切さを米側に理解してもらう必要がある」(元米政府高官)。

 欧州でも頭越しの米ロ接近への不安が漂う。

 むろん、自由や人権をトランプ氏に説いても、聞き入れられず、逆効果になる恐れもある。それでも英国が欧州連合(EU)離脱を決め、フランスやドイツが選挙を控えるいま、彼に率直に助言できる首脳は安倍氏のほかに見当たらない。

 訪米で得た資産を使い、トランプ氏と民主主義についても語れる関係をめざすべきだ。難しいとしても、あきらめるのは早い。まだ、2回しか会っていないのだから。



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