時論 リスマ経営、後継者の条件は 実績重視、リスク取る人 永守重信氏 日本電産会長兼社長 2015/08/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の日曜に考える面にある「時論 リスマ経営、後継者の条件は 実績重視、リスク取る人 永守重信氏 日本電産会長兼社長」です。





 創業者や実力経営者といわれるトップの世代交代が相次ぐなか、経営権を巡ってお家騒動に陥ってしまう事例も増えている。企業の存続に影響が大きい創業者や実力経営者は事業承継にいつ、どのように備えるべきか。一代で1兆円企業を育て、「世襲はしない」などと明言する日本電産の永守重信会長兼社長に、後継者問題や持続成長のカギを聞いた。

 ――事業承継で苦労する企業が多いようです。

 「どこも悩んでいる。僕の場合も試行錯誤だ。創業当初は零細だったから自分で育てようとした。仕事が終わると毎日弁当を食べながら永守経営塾を開いて」

 「だが10年くらい前か、会社も大きくなって『育成するには時間がかかる。外には優秀な人もいるだろうから、そういう人を入れれば楽になる』と思った。で、そういう人を入れだした。灘高→東大→ハーバード大みたいなエリート人材だ。小さい頃、お金持ちが高級ホテルで食べてるフランス料理、さぞかしおいしいだろうなとうらやましかっただろう。あれと同じだ」

 「結論をいうと錯覚だった。そういう経歴の人が経営がうまいとは限らない。外資に3年いたとか、それだけでは難しい。やらせてみたら『これだったら自分が育てた生え抜きの方が上だ』と最近わかった。10年かかってようやくだ。それでもう一回経営塾を始めて育成にエネルギーを使おうと考えた。時間はかかるが仕方がない。世の中、そんなに人材はいないよ」

 ――「プロ経営者」は難しいということですか。

 「信じられないとかじゃないが、そんなに務まる人はいないだろう。いくつかヘッドハンティング会社に相談したことがある。僕が思うスペックを言って『こういう人いないか』と聞いた。だが『そんな人いません』ということだった」

 「僕はね、『3T経営』と『3K経営』と言う。3Tは低成長、低収益、低株価の意味。営業利益率がせいぜい5%の会社。まあ日本の平均だ。そういう経営ができるからといって僕が目指す3K経営(高成長、高収益、高株価)ができるとは限らない。営業利益率は10%、15%だ。求めるものが違う。利益率10%は5%の2倍じゃない。率の差は2乗で効くから経営の力というのは4倍の差だ」

 ――後継は結局、今いる人に落ち着いたのですか。

 「もともとは、創業40周年の2013年に連結売上高を1兆円規模にして僕は会長になろうと考えていた。そのために内部から上げるか外部から連れてこようとしたが、残念ながら僕はまだ会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)だ。少なくとも社長を早く決めないとと思う。だが誰でもいいというわけにはいかない。実績主義だから利益貢献が大きい人。最も売上高と利益をあげる事業部から上がってくるのが普通だ」

 ――シャープ元社長の片山幹雄副会長を今年、代表取締役にしました。

 「片山君はうちに来てまだ1年だ。もう少し時間がかかる。だが、今やってることをちゃんとまとめ、成果を上げたら、候補であることは事実だろう。あくまで実績が全て。うちでぽっと社長になれるかといったらそういうもんじゃない」

 ――ソフトバンクグループの社外取締役です。

 「後継者の悩みは同じだ。でも孫(正義)さんのところは完全にウエスタンカンパニーだね。一般的な日本の企業とは違う。だけど共通するのは彼も実績主義なこと。やっぱり誰に継がせるとかでなく、だれが実績を上げてくれるか、で考えている。子どもに継がせる場合は少し違うと思うが、僕などはそういう気持ちはないからね。他人に渡す以上はこの会社をよくしてくれる人に渡したい」

 ――社外取締役はなぜ引き受けたのですか。

 「経営者は井の中の蛙になっちゃいかん。創業者は特にそうだ。社内では怖いものはない。恐らく、孫さんも一緒。社内の人は何も言えなくなる。嫌なことを言うのは僕とか(同じく社外取締役でファーストリテイリング会長兼社長の)柳井(正)君だ。一度孫さんに言ったんだ。『僕みたいなややこしい人間入れたら困るよ』と。そしたら『それを望んでいる』と言っていた。実際、耳の痛いこと言うけど非常によく話を聞く。勉強になりますよ」

 ――孫社長は外国人を後継者に指名しました。

 「うちとは違う手法だ。指名された(ニケシュ・)アローラ副社長は立派だと思うよ。600億円の私財を投じてソフトバンクの株を買うだろ。ああいうことは信頼感を増す。経営から絶対逃げないぞと退路を断つわけだ。僕も三協精機製作所(現日本電産サンキョー)などを買収した時は銀行からお金を借りて株を買い、個人筆頭株主になった。リスクを取って経営する。いい加減な経営をしたら株は下がり、頑張ったら上がる。そういうことだ」

 ――カリスマと呼ばれるような実力者の後の経営は難しそうです。

 「うちの場合は基本的に集団指導体制にすると決めてある。経営体制の基本方針も最近決めて、社長4年、会長4年、相談役2年の10年制ということにした。グループ会社も同じだ。で、トップは必ず最も利益貢献した人がなる」

 ――こんど、国内外のグループ幹部向けにリーダー養成機関をつくります。

 「企業内大学校だ。創業者が長年培った経営の知識を植え付けていく。僕も時間をどんどん使う。一番伝えたいこと? 会社経営の神髄だな。経営者というのは犠牲と奉仕の精神がないといかん。日曜日にゴルフしようとか、そんな気持ちを持ったらだめだ。単に働けということではなく、経営という仕事が天職であり、かつエンジョイしている。そういう人がやるべき仕事だ。それを教える」

 ――経営者はやっぱり社内で育てるものですか。

 「この10年でそう思い出したよ。だが準プロパーでもいい。うちは10年勤続すると準プロパーと言っている。それだけ一緒に働くとよくも悪くも全部わかる。この会社に10年いたらすごいことだ。幹部としてストレステストにもなる。ものの考え方や職業観が違うと一緒に仕事はできない」

 ――事業承継に失敗する企業も最近目立ちます。

 「まあ、同族でもめるのはいかんな。次はこうするとしっかり決めておかなかったのがいけない。トップの条件や任期とか、変えてはいけない原則をね」

 「みんな経営者は苦悩している。孫さんだって絶好調のように見えるが、大変だと思う。期待が高いからね。株が上がると、もっと上がるはずだと。ちょっとでも構造改革しようものなら『神話は消えた』とか書かれる。宿命? そう、そういう仕事なんですよ。しんどいなあとか思っている人に渡したら会社はつぶれるよ。外資を渡り歩いて2、3年たったらヘッドハンターから電話かかってきて次の会社に移ってまた次、と。そりゃ楽ですよ。責任ないもん」

 「僕には息子が2人いるが、最初から世襲はしないと公言してきた。両方とも親の姿を見てきたから『親父はエンジョイしてる』と感じてくれたらしく、会社を作って社長をしている。彼らもエンジョイしてる。不思議なもので音楽家の子は音楽家に、というのが正しい。『最近どうだ』と聞くと愚痴は言わない。夢を語る。そういう人が経営者をやらないといけない」

 ――会計不祥事があった東芝の問題では経営者の資質が問われました。

 「社員にプレッシャーをかけたのがおかしいと、そんなことが言われているがそれはおかしい。どこでもプレッシャーはある。それがなく、計画未達でいいぞと言ったら会社はつぶれる。どんなに名馬でもムチで尻をたたかれないと馬は走らないだろう。勝つにはやっぱりばしっとやる。問題はどこでたたくかだ。たたかれすぎて血が流れているとかそれではいけない。相手の力をみたり、現場に行ったりしてよく社員を見ないと。不正が起きるときはトップが相手の力以上に要求している場合が多い」

 ――日本電産をこれからどんな会社にしますか。

 「2030年に10兆円を目指すと言っている。やり方は基本的に変わらない。今までに50社ほど買収したが、今後も50%がM&A(合併・買収)、50%がオーガニックな成長だ。企業買収は規模が大きくなる」

 「僕か? あと15年、第一線にいると思うよ。肩書は多分変わる。会長になったりな。10兆円成し遂げたら、リタイアだ」



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です