月曜経済観測 世界景気の死角は 潜在成長率は低いまま 農林中央金庫理事長 河野良雄氏 2017/11/20 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「月曜経済観測 世界景気の死角は 潜在成長率は低いまま 農林中央金庫理事長 河野良雄氏」です。





 日米欧をはじめとして世界経済の見通しが好転している。好調な経済に死角はないのか。機関投資家である農林中央金庫の河野良雄理事長に聞いた。

リーマン後最高

 ――世界経済の動向をどう見ますか。

 「2008年のリーマン・ショック以降で、世界経済は最もいい状態にある。米国は絶好調で、日本もいい。欧州や中国も悪くない。ただ過去の景気拡大局面と比べると、潜在成長率はかなり低い。日本は1.5~1.6%、米国は2%程度が普通になっている。来年を含め、この状態はずっと続くだろう」

 「過去の景気拡大局面ともう一つ違う点は、物価や賃金が上がらないことだ。日本では団塊の世代が大量に退職しているので、生産年齢人口はどうしても足りなくなる。彼らを再雇用することでそれを補っているので賃金は安い」

 ――成長率を高めるにはどうすべきでしょう。

 「生産年齢人口の不足は構造的な問題なので、生産性を上げるしかない。日本では働き方改革が一番大きなポイントになるだろうが、簡単ではない」

 ――海外も同じですか。

 「違う。最近、米国のシリコンバレーを訪ねたが、これから革命が起きると感じた。IT(情報技術)がビジネスの基本をがらりと変える。金融では店舗が要らなくなり、モバイルで済むようになる。圧倒的にコストが安くなる」

 「有力ベンチャーキャピタル(VC)のプラグ・アンド・プレイで話を聞いた。日本の大企業は『あなたの提案に興味を持てば、お金を出そう』という姿勢でスタートアップと接するが、それでは組む対象にならないと言われた」

 「選ぶのはスタートアップの側。彼らが大企業のことを『資金を持ってるだけ』『鋭い思考がない』と判断すれば、もう相手にしないと言われた。本当に驚きだった。日本の大手企業で話題に上ったのはトヨタ自動車だけだった」

米利上げに懸念

 ――世界経済にリスクはありませんか。

 「中国はハードランディングはしないだろう。習近平(シー・ジンピン)国家主席は権力を掌握したようだし、優秀な官僚が支えているので、おかしな経済運営はしないと思う」

 「懸念材料は米国の利上げだ。いま世界の景気がいいのは各国の中央銀行が量的緩和でじゃぶじゃぶに資金を供給してきたからで、その潮目が変わろうとしている。ただ米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長の発言を聞くと、すごく慎重だと感じる。12月も利上げするだろうが、来年の利上げは2回、多くて3回のペースだろう」

 ――相場への影響は。

 「潮目の変化は投資のチャンスを生む。日銀の黒田東彦総裁は緩和を続けると言っているので相対的に円が安くなり、外国人が日本株を買いやすくなる。日本企業の業績もいいので、中期的に日本の株式相場が落ちる理由がない」

 「最大のリスクは北朝鮮問題だ。米国ではいろんな銀行のトップから一様に『よくのんびりしていられるな』と言われた。日本と違い、戦争を身近に感じているのだろう」

(聞き手は編集委員 吉田忠則)

 こうの・よしお 金融危機で農中が苦境にあった09年に就任した。69歳。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です