未来技術 2020(2) 感染症すぐに判別・発見 ゲノム解析や検査キット 2016/01/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の科学技術面にある「未来技術 2020(2) 感染症すぐに判別・発見 ゲノム解析や検査キット」です。





 訪日外国人旅行客数が増え、2015年は2000万人に近づいた。世界中から人が集まる大規模イベントである20年の東京五輪では、感染症流行を防ぐための水際対策が重要となる。鍵になる技術の一つが「ゲノム解析」だ。病原体をゲノム(全遺伝情報)から素早く特定できる。

結核などの安価なキットを開発し、使い方もザンビアで指導している=鈴木定彦・北大教授提供

 「韓国では北朝鮮から飛んできた蚊が原因とみられる三日熱マラリアが流行しており、日本に入る可能性もある」。国立国際医療研究センター研究所の狩野繁之熱帯医学・マラリア研究部長はこう指摘する。温帯でも問題になっているマラリアだ。

 14年にサッカーワールドカップが開かれたブラジルでは同年、撲滅されたはずのポリオ(小児まひ)のウイルスが見つかり、他国から入った可能性が指摘された。15年は韓国で中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)感染が広がり、西アフリカでエボラ出血熱の流行が続いた。

 あまり経験したことのない感染症や新たな感染症が入ってきた際は、素早く病原体を確定する必要がある。メタゲノム解析は、高速で遺伝情報を解読する「次世代シーケンサー」を駆使し病原体の特徴を網羅的に調べる。

 この解析法は「21世紀の顕微鏡」とも呼ばれる。大阪大学の堀井俊宏教授は、解析した配列を数千万種類の生物の配列データと照合し、病原体を突き止める手法を磨く。

 堀井教授は「20年をめどに簡便で高感度に解析できるようにし空港などでの検査に生かしたい」と話す。琉球大学と連携し、14年に国内での感染例が69年ぶりに報告された「デング熱」などの検出体制構築も目指す。

 技術革新が進んだとはいえ、メタゲノム解析はまだコストがかかる。患者の体内の抗体などを検出するキットの高度化・低コスト化も不可欠だ。

 世界保健機関(WHO)が近い将来に流行し多くの人命を奪う恐れのある危険な感染症リストに載せた「リフトバレー熱」。長崎大学の森田公一教授と井上真吾助教らは安価なウイルス検査キットを作った。血液1滴から15~30分で検出可能だ。

 ウイルスや抗体に反応する金の微粒子などを使う。「大がかりな装置が不要で途上国で使いやすい」(森田教授)。WHOの認証を受けて16年度末の実用化を目指す。

 北海道大学の鈴木定彦教授らは常温保存でき、1回約100円で検査できるキットを開発した。ハエが媒介する寄生虫による感染症「アフリカ睡眠病」や結核が対象だ。すでにザンビアに導入された。

 企業も動き出した。デンカ生研は北大の高田礼人教授と協力し、エボラ出血熱のウイルスを15分程度で調べられるキットを開発した。「WHOから要請があっても応えられるよう準備を進めている」(同社広報)

 地球温暖化の進行で病原体を媒介する動物の生息地域が広がり、日本で熱帯感染症のリスクが高まる恐れもある。最悪の事態を想定し、備えを充実させることが大切だ。



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