比大統領の捜査要求 「市長時代に殺人」巡り国連人権高等弁務官 2016/12/22 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の国際面にある「比大統領の捜査要求 「市長時代に殺人」巡り国連人権高等弁務官」です。





 【マニラ=遠藤淳】フィリピンの強硬な薬物犯罪対策を巡って、ドゥテルテ大統領と国連との対立が深まっている。ドゥテルテ氏が過去に犯罪容疑者を殺害したと述べたことに対し、国連人権高等弁務官が捜査を要求。“超法規的殺人”に関する国連の現地調査の実現のめども立っていない。ドゥテルテ氏は強気の姿勢を変えておらず、波紋が一段と広がりそうだ。

 「おまえもできると警察官に示すために私も(薬物犯罪容疑者を)殺した」。ドゥテルテ大統領の発言は大統領宮殿で12日開かれたビジネス関係会合で飛び出した。南部ダバオ市の市長だった時の話として、バイクに乗って巡回し、自ら射殺したと明らかにした。

 16日には訪問先のシンガポールで記者団に「3人殺した。嘘はつけない」と改めて述べた。大統領の立場では自ら手を下さないとして「可能なら犯罪者を逮捕させるが、抵抗されて身の危険を感じたら、射殺するよう警察に命じる」と述べた。

 ドゥテルテ氏の発言を受けて、国連人権高等弁務官事務所のゼイド高等弁務官は20日、殺人事件として捜査するようフィリピン司法当局に求める声明を出した。「殺人罪の構成要件を満たすのは明らか」とし、「司法が機能しているなら公に殺人を認めた人物を捜査すべきだ」と強調した。

 ゼイド氏の要求に対するドゥテルテ氏や大統領府の反応は伝わっていない。ドゥテルテ氏は大統領選中などにも過去に犯罪容疑者を殺したと発言している。

 国連とは、超法規的殺人に関する現地調査の条件を巡っても意見が衝突していた。8月、人権問題に関する特別報告者のアグネス・カラマード氏が同国訪問の意向を表明。ドゥテルテ氏は当初反発し、国連脱退を辞さない考えを示したが、比政府が10月、受け入れを表明した。その条件としてドゥテルテ氏は公開討論会の実施などを求めた。

 カラマード氏は今月15日、公開討論会は国連の内部手続きに反するとして拒否。共同記者会見の開催などを提案した。「公の場で議論しよう。そうすれば(国連の指摘は)間違いだと反論できる」。ドゥテルテ氏は17日、改めて条件を突きつけ、国連の現地調査は実現の見通しが立っていない。

 フィリピン当局によると、7月1日から12月15日の間に違法薬物犯罪に関連して殺害された容疑者は6173人。そのうち警察が取り締まり中に殺害したのは2124人で、当局は「抵抗したため、やむなく殺害した」などと説明。4049人は警察の捜査外で何者かに殺されたとしている。

 国民には不安も広がる。世論調査会社ソーシャル・ウエザー・ステーション(SWS)が19日発表した調査では家族が巻き込まれる可能性について「非常に不安」「いくらか不安」とする回答が計78%に上った。実際に捜査に巻き込まれ、死亡したとみられるケースは度々起きている。

 違法薬物対策そのものへの国民の支持は厚い。SWSの同じ調査では「非常に満足」「いくらか満足」とする回答は計85%で9月時点と変わっていない。ドゥテルテ氏は「任期中は今の違法薬物対策を続ける」と繰り返しており、国連などからの批判が今後強まることも考えられる。強硬一辺倒の姿勢は国際社会との間に溝を広げそうだ。



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