民主主義 強権中国と競う 2018/03/05 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「民主主義 強権中国と競う」です。





時折、意外ではないのに衝撃をもたらす発表がある。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が権力の座にとどまり続けることは以前から自明の理だった。

とはいえ、中国共産党が2月25日、国家主席の連続2期までの任期を撤廃する憲法改正案を公表したことは、十分衝撃的だった。文化大革命の反省から、1人の人間へ権力が集中しないよう集団指導体制を制度化しようとした鄧小平氏の努力が有名無実化する。これはプーチン大統領率いるロシアの現状ともやや似ている。

集団指導体制から独裁体制への逆行で、中国も1980年代の韓国のように、急速な経済成長とともに民主化が進むはずだとの楽観論は否定される。習氏の一段の強権化は経済発展を脅かす可能性がある。独裁体制では1人の人間が国家を掌中に収めるからだ。

ロシアではプーチン氏が経済改革の旗手として登場したが、今や「収奪政治」がはびこり、経済は停滞している。権力は往々にして腐敗するが、絶対権力は間違いなく腐敗する。独裁政治は機能するかもしれないが、中国のように古くから優れた官僚制度を持つ国であっても、危険な体制ではある。

もっとも、中国では多くの国民が民主主義はあまりにも欠陥が多いと感じているに違いない。この20年間にイラク戦争や金融危機が起き、トランプ氏が米大統領に就任した。民主主義は理論上、尊い価値を備えているにせよ、今、その優位性を訴えるのは難しい。

それでもなお、筆者は「民主主義が完全だとか、いかなる問題も解決できると見せかけることは誰にもできない。実際、民主主義はこれまで試されたそれ以外のあらゆる政治形態を除けば、最悪だと言われてきた」という英国のチャーチル元首相の金言を信じたい。民主主義国は民主的であり続ける限り、権力の座にふさわしくない指導者を自由で公平な選挙を通して退陣させられるからだ。

パートナーだが友人ではない

習氏の終わりのない強権化で、我々は再び政治体制を競い合う時代を迎えたといえる。今回は民主的な体制と「社会主義市場経済」という奇妙な体制の競合だ。西側の民主主義国は中国を台頭する大国であるとともに、戦略上の競争相手とも捉えなければならない。気候変動や国際貿易、地球規模の安全保障といった問題では、中国と手を携えることが不可欠だ。

一方、海外直接投資や技術移転、中国企業の対外活動などでは、西側諸国は慎重に行動しなければならない。中国企業は中国共産党と国家の強力な指導下に置かれているためだ。民主主義国にとり、独裁色を強める中国はパートナーではあるが、友人ではない。

最も重要なのは民主主義自体を見直すことだ。普通選挙による代議制民主主義の歴史はまだ浅い。民衆扇動や金権政治がはびこりやすく、目先の利益が優先されがちだ。民主主義が世界だけでなく自国の市民からも信頼を取り戻すには、我々は課題を克服し、より良い体制に変えていくしかない。

それには国の中核機関と政治、メディアが本来の機能を果たしているかを精査する必要がある。様々な価値観が絡み合うなか、平和裏に政策を競い合うことで国民に望ましい結果がもたらされているか、改めて検証することも求められる。決して容易ではないが、我々はいま一度、心して取り組まなければならない。

By Martin Wolf

(2018年2月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2018. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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