民泊、自治体35%が規制 地域や曜日で住民に配慮 本社調 査 2018/3/11 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「民泊、自治体35%が規制 地域や曜日で住民に配慮 本社調査」です。





 条例で民泊の営業制限ができる自治体の3分の1が独自に規制する方針であることが、日本経済新聞の調査で分かった。住宅の空き部屋に旅行者らを有料で泊める民泊が6月に解禁されるため、住民の生活環境の悪化を防ぐのが狙いだ。地域や曜日により「通年禁止」「全域制限」といった厳しい規制もあり、民泊を推進する政府との温度差が浮き彫りになった。

 6月に施行される住宅宿泊事業法(民泊法)で、自治体に届け出た企業や個人は年間180日を上限に民泊の営業が可能になる。15日には届け出の受け付けが始まる。

 民泊法は都道府県や政令指定都市などに独自の規制を認めている。調査では有効回答があった自治体の35%にあたる45自治体が規制する方針を打ち出した。内容は「営業地域」と「営業日数」が大半を占めている。

 制限する地域では「住居専用地域」(78%、複数回答)や「学校から比較的近い地域」(44%)が多い。営業日では平日を禁止するなど「曜日」(72%)が最も多く、年末年始や夏休み以外認めないといった「時期の指定」(31%)もある。

 兵庫県や東京都大田区は住居専用地域などで民泊の営業を年間を通じて禁止するなど厳しい規制をする自治体も目立つ。

 調査は民泊法で独自規制ができる144自治体を対象に2月13日~3月2日に実施。129自治体から有効回答を得た。

■地域への影響、「良い」「悪い」意見割れる

 日本経済新聞の自治体調査で民泊が地域にもたらす影響を聞くと、訪日客の誘致など「どちらかというと良い影響」が24%、生活環境の悪化など「どちらかというと悪い影響」が29%と見方は割れた。影響を見極められない自治体も多く、貸し手の不動産大手の動きは鈍い。観光立国をめざす日本社会に民泊は定着するのか。解禁前夜の生みの苦しみを探る。

 別荘地の長野県軽井沢町で民泊論争が勃発している。反対の急先鋒(せんぽう)は軽井沢町。「別荘地は静穏な環境を求める人が集まる。民泊は町のブランド価値を下げる」と全面禁止を掲げる。規制条例をつくる長野県の阿部守一知事は「地元の意向は尊重したい」と話すが「全面禁止は民泊を解禁する法の趣旨にそぐわない」とする国との間で板挟みだ。

■軽井沢で論争

 そこへ地元の星野リゾートが同町の別荘で民泊を検討し始めた。星野佳路代表は「多様な宿泊形態をそろえないと観光地の競争力を落とす」と唱える民泊推進派。町には別荘に月に1回以上泊まると固定資産税を軽減する制度があるが、利用は別荘数の5分の1で、空き家状態の別荘は多い。

 県条例案は軽井沢町の扱いについて「別荘地などは市町村の意見を踏まえ、規則で定める」と先送りした。条例成立後に改めて検討し、条例の施行規則で定める方針だが着地点はなお見えない。

 調査では回答した自治体の半数超に苦情が寄せられるなど住民の懸念は各地で根強い。苦情の内容(複数回答)は「旅館業法などの許可を受けない違法民泊がある」が7割。宿泊客の騒音や見知らぬ人が出入りする不安はいずれも6割を超す。懸念を受け東京23区は大半が条例で規制する。

 「民泊の健全な推進」を唱える国も自治体向け指針では意外に細かい条件をつけている。1月下旬、東京都が区市町村向けに開いた説明会では、国の指針について「建物の構造や消防設備など規制は多岐にわたる」と注意を促した。

 「家主が同居しない一定以上の広さの物件はホテルに近い消防設備や耐火構造が求められる可能性がある」「消防署の確認を受けた通知の添付を求める」「民泊専用の新築マンションは届け出できない」――指針にはこんな内容もあり、ある区の担当者は「この通り運用して民泊は定着するだろうか」と漏らした。

■収益性で見劣り

 強まる規制にマンションなどの貸し手となる不動産大手は慎重だ。東急不動産ホールディングスの大隈郁仁社長は「法整備が不十分で、住民とのトラブルも懸念される。慎重に考えたい」と語る。苦情が出ればマンションのブランド価値を損ないかねないためだ。

 民泊解禁は東京五輪の宿泊施設不足を和らげる効果も見込む。ただ民泊には営業日数などの制限があるため「インバウンド対応なら、今のところホテルの方が収益性は高い」(住友不動産)との声が不動産業界では支配的だ。

 都市部では訪日客を見込んだホテル開業が相次ぎ、不動産サービス大手のCBRE(東京・千代田)の予測では17~20年に主要8都市でホテル客室は約3割増える。民泊に「うまみ」があるとは必ずしもいえない。

 個人の部屋の貸し手も戸惑う。民泊仲介の米エアビーアンドビーは貸し手向けのセミナーを始めたが、参加した東京・渋谷の自営業の女性(34)は「決めかねている貸し手は多い」と口にする。

 違法民泊対策も道半ばだ。調査では6割の自治体が課題として「人員や予算」を挙げた。国は罰金を引き上げるが、十分に取り締まれる保証はない。民泊に詳しい日本総合研究所の高坂晶子主任研究員は「官民が協力し、新たな技術やシステムを活用した有効な監視体制づくりを急ぐべきだ。それが民泊のイメージを変えることにもつながる」と話す。

 民泊は宿泊客と住民の交流を通じて草の根レベルで観光立国の礎を築く一歩になりうる。シェアビジネスや空き家の活用が広がる期待もある。規制と推進のバランスをどう取るか。初めにボタンを掛け違うとその芽を摘むことになりかねない。(河野俊、加藤宏一、清水孝輔、北川開)



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