民泊解禁 試練の船出(上)エアビー萎縮、家主撤退も 2018/06/12 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「民泊解禁 試練の船出(上)エアビー萎縮、家主撤退も」です。





民泊の本格解禁が迫ってきた。民泊を法的に位置付ける住宅宿泊事業法(民泊新法)が15日に施行される。急増する訪日観光客の受け皿となり、日本に観光立国への道を開くとの期待は大きい。だが営業日数の制限など規制のハードルは高い。仲介サイトの米エアビーアンドビーを介して広がった市場の行方に水を差しかねず、民泊は船出から試練を迎えている。

(画像:新法で営業に必要となったステッカーを貼る家主(東京都内)=一部画像処理をしています)

「もう続けるのは無理」。東京都新宿区のAさん(34)はため息をつく。自宅マンションなどで数年前から営んできた民泊を最近やめたのだ。

観光案内や食事を通じた交流が好評で、集客に使ったエアビーでは宿泊者からの評価が最上位だった。騒音・ゴミなどのトラブルもなく、収益の税金も納めてきた。

民泊はホームステイが盛んな欧米で普及。エアビーが日本語サービスを始めた2013年以降に日本でも施設が増えた。短期間で広がったのは、エアビーが旅館業法など現行ルールの許認可がない施設を多く載せ、ハードルが低かったため。Aさんも無許可だった。

政府は一定のルールの下で民泊を普及させようと民泊新法を作った。従来は原則無理だった住居専用地域での営業を認める一方で、一部で問題になったゴミの分別トラブルなどを防ぐ細かいルールを設けた。

Aさんが新法に沿って届け出を区に相談すると、無許可営業を反省する「始末書」への署名や任意の立ち入りを求められた。区は住居専用地域は平日のほぼすべての営業を禁じる条例を作り、規制を強めた。

マンションの管理組合も規約を改め民泊を禁じた。「いいかげんな管理の施設と一緒にされている」。Aさんは唇をかむ。

新法での営業の届け出が増えれば市場は広がる。情報通信総合研究所によると、民泊そのものの市場規模(収入ベース)は20年代前半に約1兆円と16年比で倍増する見通しだ。

だが自治体の追加規制や「個人には難易度が高い」(行政書士の石井くるみ氏)煩雑な手続きが嫌われ、廃業が相次いでいる。「民泊の備品譲ります」。交流サイト(SNS)には書き込みが相次ぐ。家具搬出など廃業を支援する業者まで現れた。新法に基づく届け出も、7日時点で約2千件にとどまる。

仲介サイトは新法施行後に無許可施設を載せられない。エアビーは6月頭に4万件以上の表示をやめた。今春約6万2千件あった掲載施設は、8割減の1万3800件になった。

そうした施設の15日以降の予約も順次取り消し、月内だけで3万件のキャンセルの恐れがある。エアビー経済圏は一気にしぼみ始めている。

東京都町田市の男性(45)は4月、自宅近くのアパートの一室を届けた。5月に受理されたが、市役所や消防署などに出向いた回数は10回に上る。民泊新法では年180日までしか営めないが、運営コストを考えると厳しいという。残る時期は1カ月以上のマンスリー物件として賃貸することを考えている。

訪日客の急増で普及が先行し、ルール整備が追いつかなかった民泊。利用経験のある訪日客143人に日本経済新聞社が5月に行った調査では、安さより日常体験を重視する人が多い。自治体ごとに曜日などが異なる規制については、65%が「旅行者にわかりにくい」と答えた。

新ルールは家主にも宿泊者にも評判が芳しいとはいえない。「悪質な民泊は排除すべきだが、善良な個人家主が退場すれば民家で交流する本来の民泊が消える」(都内の女性家主)。規制が強まれば、結果として「民」の創意工夫の力をそぐことになり、新たな市場創出を阻みかねない。

個人もサービス提供者になれるシェア経済の世界的潮流に乗り、どう観光立国への道を開くかが問われている。



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