求む!外国人家政婦 特区で採用270人どまり 2018/07/01 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「求む!外国人家政婦 特区で採用270人どまり」です。





永住権を持たない外国人の家事代行サービスが始まって1年がすぎ、日本で「家政婦さん」を志願する外国人が増えている。人気ドラマの影響もありニーズが高まる半面、在留期間が短く採用が思うように進まないなど本格普及へ向けた課題も多い。外国人による家事代行はシンガポールや中国で共働きを支える社会インフラになっている。急速な人口減に直面し、働きたい人材を総動員する必要がある日本でも、市場の浮揚に知恵を絞る必要がある。

(画像:ニチイ学館は外国人家政婦に対して、和食の調理法などを研修する(千葉県柏市))

「憧れの日本で仕事ができると聞き来日を決めた」。フィリピン人女性のマリアン・クラニバンさん(39)は家事代行大手、ベアーズ(東京・中央)に採用され2017年6月に来日した。研修を経て同年10月に仕事を始めた。「最初は大変だったが、優しいお客様が多く毎日が楽しい」と日本語で笑う。

政府は15年末、大胆に規制緩和する国家戦略特区を活用し、永住権を持たない外国人の家事代行サービスを解禁した。東京や大阪、愛知など5都府県が特区に名乗りを上げ、事業認定を受けた6社が17年春からサービスを始めた。週に1度、2時間程度の家事代行だと月2万~3万円が一般的だ。

計画の1割未満

日本の共働き世帯は17年に約1200万世帯と20年間で25%増えた。ただ日本総合研究所の15年の調査によると、共働き夫婦の比率は東京の54%に対し、中国・上海やシンガポールは8割を超える。両国では20万人以上の外国人が家政婦として働き、共働きを支える社会インフラとなっている。一方、特区制度下での日本の外国人家政婦は約270人にすぎない。

ダスキンなど認定を受けた家事代行サービス会社6社は、21年度までに計3千人強の外国人を受け入れる計画を立てる。日本人を中心とする現在の合計職員数の1割強にあたる規模だ。ただ実際に採用を決めた外国人は計画の1割に満たない。

日本でも家事代行サービスの認知度は徐々に高まっている。16年秋にはテレビドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」が大ヒット。興味はあったが利用に踏み切れない消費者の背中を押した結果、「一時的に供給が追いつかなくなった」(大手幹部)ほどだ。外国人によるサービスについても「実際に利用した消費者の口コミで評判が広まり、問い合わせが増えている」(ベアーズの高橋ゆき副社長)と言い、抵抗感は薄れている。

各社は今後、受け入れを加速するが、本格普及に向けた課題もみえてきた。

在留期間が制約

まず在留期間が3年と短い点だ。「生活習慣や文化に慣れた頃に帰国してしまう」(ニチイ学館)状態で、長く働きたい外国人や、安定的に外国人材を受け入れたい企業にとっては使い勝手が良くない。政府は在留期間が最長5年間の技能実習生などに関しては、さらに通算で5年間就労できる資格を与える方針だ。

25年ごろまでに、建設や農業など5業種で50万人超の外国人を受け入れる。事実上、単純労働分野で門戸を開く。内閣官房幹部は「他業種も希望するなら、対象になり得る」と話す。企業からは「柔軟な運用を求めたい」という声が強い。現行制度では採用できる外国人が事実上、フィリピン人に限られている点も障害になっている。

海外でも外国人家政婦のニーズが高まるなか、国際的な競争力のある賃金を提示できるかも課題だ。

上海市で住み込みで働く家政婦の月収は8千元(約13万円)程度。日本では「月15万~20万円程度が一般的」(ベアーズ)で見劣りはしない。ただ日本は生活費がかさむほか事前の研修など求められるスキルが高い。制度を定着させるには給与水準の再考も必要となりそうだ。

政府は日本の15~64歳の生産年齢人口が40年度に18年度比で約1500万人減ると試算している。年金制度の見直しで元気な高齢者の労働参加を促したり、保育園などの待機児童を減らすことで出産後の女性の社会復帰を後押ししたりしている。

これまで日本の外国人受け入れ政策は、治安面などへの配慮から高度な専門知識を持つ人材に限定していた。ただ人手不足は想定を超える速度で深刻になり、社会生活の隅々に影響を及ぼし始めた。

足元の人手不足は一時的な課題ではなく、将来にわたり日本が直面するであろう構造的な課題だ。まだ約270人しかいない外国人の家事代行サービスも、多様な働き方を支える方策の一つとして育てる必要がある。

(高尾泰朗、下野裕太、川手伊織)



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です