海外ネット通販、違法品急増 2018/06/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「海外ネット通販、違法品急増」です。





海外の商品を買うネット通販の広がりとともに、違法品の輸入が急増している。商品を取り寄せる国際郵便物に紛れ込み、覚醒剤は倍増の勢いだ。摘発する税関は検査体制の整備が追いつかない。危機感を強める各国の税関は監視強化に動くが、摘発に必要な個人情報の扱いを巡り各国の意見が対立する。足並みをそろえるのも簡単ではない。

「通関業務は多忙を極めている」。東京税関の担当者はため息をつく。訪日外国人の増加だけが理由ではない。税関を悩ませているのが、個人によるネット通販だ。日本の税関への輸入申告件数は2017年に約3411万件と、10年前に比べて2倍に増えた。

増加の背景にある小口の荷物は国際郵便物が多い。この大量に入ってくる郵便物に違法薬物が紛れ込む。17年に国際郵便物を使った覚醒剤の摘発件数は前年比9割増の38件、大麻は7割増の99件に達した。かつてはコンテナなどの貨物に紛れ込むケースが多かったが、最近は小口の荷物が増えた。

危機感を募らせる税関は対策に動いている。不正輸入の対策は輸出元も含めた国際的な連携が欠かせない。このため各国の税関による世界税関機構(WCO)は違法品対策に向け、各国の税関が利用する世界共通の指針を作ることを決めた。ポイントの一つが、抜き打ち検査の精度向上に向けた情報交換だ。

輸出入者の情報が共有できていれば、過去の実績などから怪しい荷物を検査することができる。一方で宛名が手書きでデータ化されていない国際郵便も多い。商品の価格や輸出入者のデータを持つ米アマゾン・ドット・コムや中国のアリババ集団などの電子商取引(EC)大手との連携を模索する。

国境を越えるECについて世界共通の貿易ルールはない。世界貿易機関(WTO)が開いた17年12月の閣僚会合で、EC全体のルール作りに向けた議論を始めることで一部の国が合意したばかりだ。ルール作りは環太平洋経済連携協定(TPP)など特定の国同士で結ぶ自由貿易協定(FTA)にとどまっている。

ただ、世界の税関が足並みをそろえて対策に乗り出すのは簡単ではない。安心や安全に向けた対策とはいえ、個人情報がかかわるデータの共有にはプライバシーの問題が絡むためだ。ECでの買い物は生活に関わるものも多く、情報が政府機関に渡ることを懸念する声もある。

関係者によると、「航空機の旅客情報の共有の取り組みでは、欧州連合(EU)は他国の安全よりも、自国民のプライバシー優先との立場を崩さない」。コンテナ輸送を前提に輸入者責任を原則としたルールと異なり、ECでは個人情報の扱いが壁になる。WCOの御厨邦雄事務総局長は「ECのデータ取引の部分は加盟国間の考えの差が大きい」と指摘し、まずはモノが動く部分に限定してルール作りを急ぐ。

東京五輪まで2年。テロ対策の観点でも税関の連携は重要だ。今も目の前を違法な輸入品が通り過ぎているかもしれない。日本はここでも、国際協調を主導する力が問われている。

(宗像藍子)



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