漫画ただ読み、根絶難しく 2018/06/05 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「漫画ただ読み、根絶難しく」です。





インターネット上で漫画などを「ただ読み」させる違法な海賊版サイトが横行し、出版業界に深刻な打撃を与えている。利便性を高めたサイトが現れ、一般の若者らにまで利用が拡大。運営者は巧みに身元を隠し、企業の広告などで利益を得ているとみられる。作者らの創作の努力を踏みにじる行為だが、接続を遮断する強行策には慎重論もあり、根絶の決め手は見えていない。

「特定のサイトを潰しても新しいサイト出てきたら無意味だよ。根本的に解決しないと終わらないよ」

数万点規模の作品が掲載され、2017年9月から半年間で延べ約6億2千万人が利用したとされる海賊版サイト「漫画村」。運営者とみられる人物は短文投稿サイト「ツイッター」で出版社や政府をからかうような投稿を繰り返してきた。

海賊版サイトの怪しげで危険なイメージを変えたのは、16年に現れた「フリーブックス」だった。スマートフォン(スマホ)から簡単にアクセスでき、画面の表示や操作も分かりやすく、新旧の人気漫画をまとめて無料で読むことができた。

中高生にも広がる

「フリーブックスの登場は出版界に衝撃を与えた。中高生などの一般消費者にも海賊版利用が急拡大してしまった」と大手出版関係者は振り返る。

フリーブックスは17年5月に突然閉鎖したが、その後を継ぐように成長したのが漫画村。口コミで利用が拡大するとともに新作の更新頻度が上がり、サイトも洗練されていった。

漫画村を独自に調査していた男性ハッカーによると、漫画村は削除要請や捜査からサイトを防護する「防弾ホスティング」と呼ばれる海外のサービスを利用。麻薬売買や児童ポルノなどのサイトでも使われており、地下壕(ごう)のような物理的にも隔絶した場所にあるサーバーでデータを保管しているとされる。

個別の利用者に対しては、米国の会社が運営するコンテンツ・デリバリー・ネットワーク(CDN)を経由して配信。複数の国に置かれたサーバーのネットワークを通すことで、大本のサーバーの所在をさらに特定しにくくしていた。

主な収入源とみられるのはサイトに掲載されていた広告。ネット配信大手の「DMM・com」(東京・港)は、同サイトに広告を出していると知らないまま、広告代理店を通じて17年1~11月に計約2千万円を支払っていたという。

遮断には慎重論も

コンテンツ海外流通促進機構(東京・中央)は、漫画村による被害額について、サイトに接続した延べ人数に単行本・雑誌1冊相当の金額をかけて約3千億円に上ると推計している。

政府は4月13日、被害の深刻さを踏まえた「法制度整備が行われるまでの臨時的かつ緊急的な措置」として、漫画村など特に悪質な3つの海賊版サイトに限り、接続業者が利用者の閲覧を遮断する「サイトブロッキング」を行うのが適当とする対策を決定。NTTグループ3社は同月23日、3サイトへのブロッキングを実施すると発表した。

同じころ、DMMを含む複数の企業が漫画村への広告配信を停止。包囲網が狭まるなか、サイトは4月末までに閉鎖状態となった。

ただ、接続業者が利用者のアクセス先を確認してブロックするという行為は、憲法や電気通信事業法が規定する「通信の秘密」の侵害に当たる恐れがあり、慎重な意見も根強い。広告主が意図しないまま問題のあるサイトに広告が出てしまうという、ネット広告の課題も残っている。

福岡県警などは著作権法違反の疑いで漫画村の運営者らの捜査に乗り出したが、捜査関係者は「海外のサーバーを複雑に経由する仕組みになっており、運営者にたどり着くのは容易ではない」と話す。

出版大手の担当者は「海賊版サイトは日本が誇る漫画文化を根底から破壊してしまう。海賊版を利用するのはそれに加担する行為だと理解してほしい」と話している。

(吉田三輪)



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