燃料税引き上げの好機 米ハーバード大教授 ジェフリー・フランケル氏 2015/08/24 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞のオピニオン面にある「燃料税引き上げの好機 米ハーバード大教授 ジェフリー・フランケル氏」です。





 原油価格は昨年1年間で50%以上下落した。その経済的影響は、石油輸出国にとってはマイナス、輸入国にとってはプラスだったといえる。だが経済に直結しない影響はどうだろうか。環境負荷などを考えた場合、原油価格は上昇するほうが消費量を減らすから好ましいのか、それとも下落するほうが原油生産を抑えるから好ましいのだろうか。

 答えは、両方である。すなわち産油国に払う価格は下げ、消費者が払う価格は上げる。後者のためには、原油・石油製品への補助金を打ち切るか、税金を引き上げればよい。新興国の多くは、原油の値下がりを機にこの種の改革を実行してきた。米国も新興国を見習うべきだ。

 米国の道路や橋梁は老朽化が深刻で、全米の輸送インフラが投資と保守を必要としている。経済学者が長年主張してきた通り、ガソリン税の引き上げが最善の策である。米連邦ガソリン税は先進国の中で最も低い。

 石油への補助金削減や増税で確保した財源を、財政赤字の削減や、望ましい支出に充当できる。同時に石油消費量が減るから、交通渋滞と事故の減少、大気汚染と健康被害の緩和、温暖化ガスの抑制が期待できる。燃料税の引き上げは、こうした環境目標を他のどの方法よりも効率的に達成する手段だ。

 そのうえ国家安全保障にも寄与する。燃料の小売価格が低ければ消費量が増え、中東情勢の不安定化といった混乱の影響を受けやすくなる。米国の石油会社への補助金は国家安全保障の観点から正当化されることが多いが、実際には「まず米国の石油を使う」という方針は、長期的なエネルギー自給を危うくする。燃料補助金は所得の分配を是正するという誤った説明もよく聞くが、現実はむしろ逆である。貧しい人々は公共交通機関を使うか、歩くからだ。

 米国で燃料税の引き上げは政治的に不可能と考えられてきた。だが政治的に困難なのは他国も同じである。一部の発展途上国の政府は、増税や補助金廃止に対する市民の抗議運動や暴動に直面した。それでもエジプト、ガーナ、インドネシア、マレーシア、メキシコ、モロッコ、アラブ首長国連邦は昨年、各種の燃料補助金を削減または廃止している。

 新興国の指導者が気づいた通り、原油価格の下落は改革を実行する好機だ。米国をはじめとする先進国にとってはマクロ経済的見地からも改革の好機である。従来は、燃料税を引き上げれば物価高につながる恐れがあった。だが現在はその心配はなく、むしろインフレ率をいくらか押し上げたいほどだ。これまで政治的に不可能だったことが他国で突如可能になったのなら、米国にできないはずはない。

((C)Project Syndicate)

Jeffrey Alexander Frankel 専門は国際経済学。米マサチューセッツ工科大博士。1996~99年、米クリントン政権の大統領経済諮問委員会委員を務めた。62歳。



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