独首相、対日接近探る 2018/06/21 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「独首相、対日接近探る」です。





6月6日、ドイツのメルケル首相は独連邦議会(下院)の演壇で「距離は離れているが、日本とドイツは親密なパートナー」と対日外交の大切さを語りはじめた。

(画像:共同記者会見する安倍首相とドイツのメルケル首相(2015年3月、首相官邸))

「ロシアを挟んで西にドイツ、東に日本」と親近感をアピール。さらに北朝鮮情勢に触れ、進まぬ非核化を懸念する日本を「理解できる」とまで言った。

安倍政権が発足してからメルケル政権の対日観は厳しかった。カネをばらまくアベノミクスを「懸念がないわけではない」と案じ、中韓と争う歴史認識に注文をつけた。

それが突然の方針転換。議会を傍聴していた独メディアにも意外だった。「米ロより日本を重視」と発信した。

発言を誘ったのは首相が率いる保守系与党、キリスト教民主同盟(CDU)のキーゼウェッター議員の質問だった。傍若無人な米国と、中国の脅威という難局に直面するのは欧州も日本も同じ。「ならば連携したらどうか」と水を向けたのだ。

なぜ日本を名指ししたのか。取材に応じたキーゼウェッター氏の主張は明快だった。「保護主義がまかり通るなかで、ドイツと日本は自由貿易の旗を掲げている。デジタル化や学術研究、医薬など協力できる分野はまだあると思った」という。

メルケル首相も日本へのリップサービスを意識したのではない。「本当に関係を深めたいと考えている」と首相に近いCDU筋は証言する。

背景には、欧米の信頼関係の崩壊がある。人種差別や女性蔑視の発言を繰り返すトランプ米大統領をリベラル色の濃いドイツの主要政党は当選前から毛嫌いしていた。「価値観が相いれない」。その疑いが確信へと変わったからこそメルケル首相は1年前、「他の国を全面的に信頼できる時代は終わった」と発言した。

米国との対峙には2つの制約がある。ナチスからドイツを解放し、民主主義をもたらしてくれたという恩義。そして独企業の多くが米国市場を頼っている点だ。だから声高な対米批判はフランスに任せ、ドイツは米国以外の連携相手探しに出た。

トランプ政権との親密さばかりをアピールしていた日本も、最近は不協和音が漏れる。その変化をドイツは見逃さなかった。日本が米国抜きで環太平洋経済連携協定(TPP)を進めた点も「自由貿易の守り手」との評価を高めた。

日本企業にはチャンスだ。「日本に好印象を持つ独企業が増えている」と経済界の橋渡し役を担う日独産業協会(DJW)のウィースホイ理事長は語る。独企業が日本企業と組んで中国に進出し、逆に日本側がドイツの手を借りて東欧市場を開拓する例が増えそうだという。日欧の経済連携協定(EPA)の発効という追い風も吹く。

課題は持続力だ。日独関係にかかわる政治家、経済人はドイツ、日本とも片手で数えるほど。心もとないほどパイプは細い。それを太くできなければトランプ劇場後に日独は再び疎遠になってしまう。

日本はドイツを踏み台に欧州連合(EU)への影響力を強める心構えと戦略はあるか。対米追従のなかでの思考停止では好機を逃す。

(欧州総局編集委員 赤川省吾)



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