生産性考 危機を好機に(2) 週3日休む旅館 非製 造業こそチャンス 2017/11/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の第一面にある「生産性考 危機を好機に(2) 週3日休む旅館 非製造業こそチャンス」です。





 神奈川県に無休から「定休3日」に切り替えながら、社員の平均年収を4割増やした老舗旅館がある。鶴巻温泉の「陣屋」だ。

 「悪循環だった」。オーナーの宮崎富夫氏が経営を引き継いだ2009年、部屋は20室のみだが稼働率は40%台だった。団体客向けに宿泊料を9800円からに設定したが利益は出なかった。「平均単価を上げるしかない」。宮崎氏は14年2月から毎週火・水曜日を休館とし、16年1月からは月曜日も加えた。

神奈川・鶴巻温泉の老舗旅館「陣屋」は無休から定休3日に切り替えたが、社員の年収は4割伸びた

 一方で正社員を20人から25人に増やし、休館日の半日を研修や会議に充て、接客力向上に努めるとともに食事も改めた。その結果、平均客単価は4万5000円にまで上昇。稼働率も80%に高まり、社員の平均年収は288万円から398万円と4割増えた。

 製造業に比べ非製造業の生産性は伸び悩む。日本生産性本部によると1995~2015年の実質労働生産性(就業者1時間当たり)は製造業で74%増えた一方、非製造業では運輸・郵便業が9%減、宿泊・飲食サービス業が5%減、建設業が2%減とそれぞれ落ち込んだ。

 製造業は14業種中10業種で労働生産性が伸びたが、非製造業で改善したのは15業種中8業種のみ。非製造業は国内総生産(GDP)の約8割を占めるだけに影響は大きい。経済産業研究所の森川正之副所長は「個々の企業の努力に加え、非効率な企業の縮小・退出といった新陳代謝が欠かせない」と指摘する。

 09年に発足したみちのりホールディングス(東京・千代田)はこれまでに経営環境が厳しい地方のバス会社6社を次々と傘下に収めながら、経営を立て直し、今では6社とも黒字だ。その中の一社である茨城交通(茨城県水戸市)ではICカードの導入や柔軟な価格戦略による増収効果で、10年度に在籍していた社員の平均年収は16年度までに24%増えた。

 みちのりHDの親会社である経営共創基盤の冨山和彦最高経営責任者(CEO)は「労働集約的な産業こそ、生産性を劇的に向上できる」と断言する。

 従来の常識を打破する動きも出てきた。大成建設が7月に実施したベースアップの対象は若手のみ。30歳代前半までの限定だ。年功序列の賃金体系が続くゼネコン業界では異例。賃上げ幅は平均2万3300円で20~30歳代社員の平均基準内賃金の6.7%にあたる。村田誉之社長は「若手社員を確保するためには賃上げが不可欠」と語る。都内の建築現場で働く末田優子さんは「モチベーションアップにつながる」と笑顔を見せる。

 年功序列も崩しかねないが、仕事量が増える一方の若手にきちんと報いて、生産性を高める狙いだ。日本経済のカギを握る非製造業の生産性。痛みも伴うが常識を一歩踏み出す勇気が必要だ。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です