異次元緩和 ゆがむ市場(上) 国債運用が消える日 2015/10/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の経済面にある「異次元緩和 ゆがむ市場(上) 国債運用が消える日」です。





 日銀の黒田東彦総裁が就任直後の2013年4月に異次元緩和を始めて2年半。任期5年の折り返し点を過ぎ、市場のゆがみが表れてきた。

 「国債を買おうなんて珍しいですね。日銀の異次元緩和で、金利はないに等しいですよ」。都内のある大手銀行の窓口。「国債を買いたい」と切り出すと、応対した行員は驚いた表情を浮かべてこう答えた。

 ならば「国債で運用する投信はどうか」と返すと、「低金利なので国債を買わず、現金で運用しています」。基準価格がじりじり下がり、とても勧められないという。

 債券市場では日銀による国債の大量購入で金利が大きく低下し、償還が近い国債はマイナス金利になることも珍しくなくなった。長期金利は15年1月、過去最低の0.195%まで下げた。

 国債発行を担う財務省は「新型窓口販売国債」と呼ばれる個人向け国債の2年債と5年債の募集を相次いで停止。個人が保有する国債総額は約15兆円。ピークだった08年の半分以下だ。

商売にならない

 国債の発行残高1000兆円超のうち、毎年発行する新規国債は40兆円未満。それなのに日銀が年間80兆円も買い上げるため、市場に出回る国債は減り、需給が締まって金利が低下(国債価格は上昇)する。金利低下は経済活動を刺激するが、同時に債券市場のゆがみも目立ってきた。

 「これじゃあ、商売にならない」。邦銀の債券ディーラーがこう漏らすのは、金利が下がり過ぎて国債で運用する利点が薄らいだためだ。日本相互証券では、9月期末の9月24日に10年債、4日後の28日には30年債の取引が成立せず、金利を映す証券会社の電光ボードは空欄になった。

 金融機関は国債を扱う債券部門の縮小・撤退を余儀なくされている。アール・ビー・エス証券が国債市場特別参加者の資格を返上して国債取引から撤退したほか、ゴールドマン・サックス証券など他の証券会社でも花形ディーラーの海外転出などが続いている。

 残った債券ディーラーの仕事の多くは、財務省から買った国債を数日後に日銀に転売する「日銀トレード」だ。日銀が財務省から国債を直接買うと「財政赤字の穴埋め」との批判を受けるため、市場参加者がわずかな値ざやと引き換えに橋渡し役を担う。こうした実態に嫌気が差すディーラーも多いという。

あと2年が限界

 「あと2年が限界ですね」。BNPパリバ証券の渡辺誠氏はこう指摘する。日銀の保有国債残高は300兆円を超え、発行残高の3割を占める。BNPパリバ証券の試算によると、このまま日銀が国債を買い続ければ、17年末に保有比率が5割を超える。銀行などが取引の担保に使う国債を除くと、買える国債が事実上なくなり、いずれ債券市場は干上がる。

 「市場の流動性は突然枯渇することもある」。国際通貨基金(IMF)は7日、「国際金融安定性報告書」の中で、世界の債券市場で円滑な取引が難しくなったと指摘。金利上昇リスクが高まっていると警告した。1998年の「運用部ショック」や2003年の「VaRショック」では数カ月で長期金利が1%以上急騰した。

 「市場機能よりも脱デフレが大事だ」。日銀内ではデフレ脱却を確実にするためであれば、市場機能が一時的に低下してもやむを得ないとの考えが強い。ただ金利が乱高下すれば、金融緩和効果も危うい。長期化する異次元緩和は綱渡りの様相を示しつつある。



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