発掘 強い会社(10)日産化学工業 渋沢栄一がつくった老舗 40万の「原薬の種」芽吹く 大手しのぐ利益率 2016/07/23 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の投資情報面にある「発掘 強い会社(10)日産化学工業 渋沢栄一がつくった老舗 40万の「原薬の種」芽吹く 大手しのぐ利益率」です。





 日産化学工業の2017年3月期の純利益は4期続けて最高の見通し。株価は22日に上場来高値を付けた。大手の伸び悩みを尻目に、快進撃を続ける秘密は世界有数の「化合物図書館」にある。

 埼玉県白岡市の同社生物科学研究所。欲しい化合物の名前をパソコンに打ち込むと、実物を「書庫」から自動で取り出せる。所蔵する化合物は全部で約40万点。年に5000点以上増え続けており、その膨大な数と管理のよさに海外から来た顧客は目を見張る。

 化合物は複数の元素が化学結合によってできた物質で、農薬や医薬品を開発する際の基になる。化合物のサンプルが多いほど、新製品に結び付く種がたくさんあることになる。このため「共同開発の申し入れが絶えない」と木下小次郎社長。

 最近のヒットは動物用医薬品原薬「フルララネル」だ。効き目の長さと安全性の高さが特徴で、14年に米医薬大手メルクグループへの供給を開始。犬のダニやノミの殺虫薬として世界70カ国で販売され、猫用も近く商品化される。連続最高益のけん引役の一つだ。

 創業は1887年。国内初の化学肥料会社で、高峰譲吉、渋沢栄一らが興した。戦前の一時期、旧日産コンツェルン傘下に入り、その名残で社名に「日産」が付く。今の日産自動車と資本関係はない。長い歴史で蓄えてきた種が芽吹いているが、これまでの経営は順風満帆ではなかった。

 転機は1988年。業績不振に見舞われ、石油化学からの撤退を迫られた。市況変動の影響を小さくし、規模は小さくても収益性の高い会社への転換を目指した。当時のスローガンは「祈りを掲げてテークオフ」。今からみると自信なげだ。

 だが「歯を食いしばって研究開発だけは続けてきた」(木下社長)。研究開発に売上高の8~9%を毎年投じ、今も総合職の4割にあたる420人が同業務に携わる。石化撤退の際、高分子技術に詳しい技術者を残したのも後々生きた。

 成果は出た。90年代以降、水稲用除草剤「シリウス」、液晶配向材「サンエバー」、半導体用反射防止材「ARC」、高脂血症治療剤「リバロ」の原薬などを次々に開発。どれもニッチだがシェアが高く、利益への貢献度が大きい。売上高営業利益率は前期まで13年連続で2ケタを保つ。

 「利益を犠牲にしても、きれいな貸借対照表を志向した」(木下社長)点も見逃せない。電子材料事業の固定資産を有税で加速償却するなど、資産のスリム化に早くから取り組んだ。前期の自己資本利益率(ROE)は14.6%と高い。

 業績は絶好調だが、木下社長は「時代の変化に合わせた事業ポートフォリオの組み替えが課題だ」と先を見据える。稼ぎ頭の製品もいずれは成熟し、新陳代謝が必要になってくる。好業績を維持しながら事業をやめる決断をできるかが成長の持続力を左右する。

(平沢光彰)

=おわり



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