相手の気持ち思う余裕を 2018/06/18 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の「相手の気持ち思う余裕を」です。





精神的な不調のために仕事から離れていた人たちの就労を支援する活動をしている人たちの集まりに参加する機会があった。現場で活動する人の声を聞ける貴重な機会だが、なかでも「感謝の言葉を口にできない人たち」の話は特に印象的だった。

(画像:イラスト・大塚いちお)

ある人が、足が不自由で車椅子に乗る人を手助けした際、車椅子の人が感謝の言葉を口にせず急いでその場を離れたときの複雑な気持ちについて話した。感謝してほしいと考えて手助けしたわけではないが、まったく感謝の言葉がないというのも釈然としないという。私は自分もその立場になれば同じような気持ちになるだろうと思った。

そのとき、精神的な不調のため仕事を辞めざるをえなくなった経験のある人が、感謝の言葉を口にしたいと考えてもできないことがあると発言した。口にするこころの余裕がなくなるからで、場合によっては感謝の言葉を口にしたいと考える余裕さえなくなることがあるという。感謝の言葉を「口にしない」のではなく「口にできない」のだ。

これは私にとっては思いがけない発言だった。私たちは、自分に対する思いやりに接したときには感謝の気持ちを口にするように教えられているし、当然そうするものだと考えている。だからこそ、私たちは、こころのどこかで感謝の気持ちを口にしてもらって当然と考えるが、それができない人がいる。

こうした齟齬(そご)が生まれるのは、障害を持つ人を手助けするときだけではない。人間関係で、自分の考えに縛られずに相手の気持ちを思うこころの余裕が必要なのは、そのためだ。

(認知行動療法研修開発センター 大野裕)



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