真相深層 「タワマン節税」はや下火? マンション契約率、7年半ぶり低水準 相続税軽減、当局が対抗策 2016/03/30 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 「タワマン節税」はや下火? マンション契約率、7年半ぶり低水準 相続税軽減、当局が対抗策」です。





 相続税の負担を減らす目的で高層のタワーマンションを買うタワマン節税。2015年1月の相続増税を機に需要がかさあげされ「相続税バブル」と評されたが最近は下火になりつつある。首都圏の今年1月のマンション契約率は7年半ぶりの50%台に沈んだ。国税庁と総務省の二段構えの節税策封じがきっかけだ。

高層階の評価額は平均で実勢価格の3分の1どまり(大阪市内のマンション群)

 「新規のタワーマンション購入は去年より減った。国の規制強化を心配したお客からたくさん電話がかかってくる」。東京の都心部でマンション売買を仲介する営業マンは浮かない顔だ。

 不動産経済研究所(東京・新宿)によると、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で1月に売り出された新築マンションの契約率は58.6%と前年同月より16.3ポイント下がり、市況の好不調の境目とされる70%を2カ月続けて割り込んだ。

 契約率を押し下げたのは20階以上のタワーマンションの低迷だ。1月の契約率は32.0%となり過去10年で最低を記録した。2月以降は持ち直し傾向だが、タワマンの契約率が90%を超していた昨年夏ごろとは様変わり。価格高騰に加え「節税に使いにくくなったことが影響した」(不動産業界関係者)。

実勢価格と乖離

 タワマン節税のしくみはこうだ。相続税の計算では、1戸あたりの土地の持ち分が小さいマンションは実勢価格より大幅に安く評価される。特に眺望の良い高層階は実勢価格が高いにもかかわらず低層階と同じ基準で評価されるため節税効果が大きい。現金のまま相続するよりも税負担は格段に軽くなる。

 「タワーマンション節税」という言葉は不動産仲介を手がけるスタイルアクト(東京・中央)の登録商標だ。沖有人同社社長が14年に出したタワマン節税の指南書は昨年1月からの相続税の非課税枠縮小や最高税率の引き上げでヒット作になった。富裕層向けの節税セミナーには昨年1年間で約2000人が詰めかけた。

 だが、沖氏でさえ最近はタワマン節税のセミナーで受講者を集めにくくなった。3月に東京・丸の内で開いたセミナーでは、空き地を高く売る方法など幅広い話題に触れる形にした。関西でも状況は同じ。大阪市内の不動産仲介会社の男性は「『相続税対策になる』とのうたい文句は控えるようにした」と言う。

 市場を揺さぶる当局の税制の変化。発端は14年秋に国税庁がひそかに実施した調査だ。全国の20階以上の住戸343物件を調べたところ、評価額は平均で実勢価格のわずか3分の1。「行きすぎだ。看過できない」。分析にあたった松山清人資産評価企画官は昨年秋、全国各局の担当者を集めた。実勢価格と評価額が乖離(かいり)しているケースや取得、相続、売却の時期が不自然に近い場合は追徴課税するよう指示した。

 昨年11月には総務省の関係団体が開いた固定資産税の制度改正を議論する有識者検討会で、委員の大学教授が提案した。「タワーマンションは階数で補正をかける方法もあるのではないか」

明確な基準なく

 相続税の算定基準となる「評価額」は総務省令で定めている。現在はマンション1棟の評価額を各戸の所有者がそれぞれの床面積で均等に分割するため、階層や日当たりの条件によって差がつかず一律だ。同省はこれを高層階ほど評価額が上がるように見直す検討に入った。早ければ18年にも実施される見通しだ。

 ただ、国税庁の指示は追徴課税するかの基準が曖昧で、総務省の制度改正も詳細が決まっていない。税制改正への警戒感が先行している段階だ。

 スタイルアクトの沖氏は「ルールが多少変わっても節税になることに変わりはない」と指摘する。「早く明確にしてくれたほうがお客に売り込みやすくなる」と語る不動産大手の幹部もいる。

 15年1月からの相続増税は、タワマン節税などの新手の節税策を生み出してきた。タワマン節税封じに納税者はどう動くか。攻防はヤマ場にさしかかった。

(江渕智弘)



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