真相深層 「ポテチ危機」に2つの影 輸入規制と人手不足 2017/4/28 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 「ポテチ危機」に2つの影 輸入規制と人手不足」です。





 全国的な品薄が続くポテトチップスで一部商品の販売再開のめどが立たない。国内出荷量の約8割を占める北海道産ジャガイモの不作だけが品薄の原因ではない。海外産ジャガイモの輸入が厳しく規制され、不足分を補えずに原料確保ができない状況が続いている。人手不足で道産ジャガイモの作付面積も減少しており、今後の安定調達に影響を与えかねない。

ジャガイモ不作でポテトチップスの販売休止が相次いでいる

 「集客の目玉であるポテトチップスの売り場を縮小するのはつらい」。4月中旬、東京都内にある中小スーパーの経営者はため息をついた。来店客のまとめ買いが相次いで店頭から在庫がなくなる一方で、入荷の予定がないからだ。

 全国でポテトチップスの品薄が起きている。カルビーは22日までに「ピザポテト」など33品目の出荷をとりやめ、湖池屋も16品目の販売を終了または休止した。在庫がなくなる小売店で商品棚の一部が空くほどの規模だが、両社は「販売再開の時期は未定」と説明する。

 カルビーと湖池屋がポテトチップス原料の8割近くを調達する北海道では、毎年秋に収穫期を迎える。2016年は長雨や台風の影響でジャガイモ出荷量が前年比で約1割減る不作となり、十分な量を確保できない事態に陥った。

 道産ジャガイモの不作だけが販売休止の要因ではない。ジャガイモ特有の事情が品薄に影を落としている。

 瀬戸内海に面するカルビーの広島工場(広島県廿日市市)。米国産を使ったポテトチップスの生産がフル稼働で続く。同工場の従業員だけでは作業が追いつかず、全国各地の工場からも応援を呼んで対応している。

 カルビーは例年、原料の約1割に相当する約2万トンのジャガイモを輸入してきたが、道産ジャガイモの不作を受けて海外調達を増やした。それでも「ポテトチップスの品薄解消は難しい」(関係者)。海外産ジャガイモの輸入は国から厳しく規制され、容易に調達量を増やせないからだ。

 生のジャガイモを輸入する場合、付着した土などに生息する外来の病害虫が侵入し、国内の農産物に深刻な被害を与える可能性がある。そのため農林水産省が海外産ジャガイモの輸入を制限しており、メーカーは不足分のジャガイモを海外から調達できない。

 そもそもポテトチップス用のジャガイモ輸入が解禁されたのは06年で、業界関係者は「世界的な産地である米国から強い要請があった」と指摘する。輸入ジャガイモを船から荷揚げしてすぐに加工できるように、工場も港に近い場所に立地することが求められた。臨海部にあるカルビーの広島工場と鹿児島工場(鹿児島市)しか認められず、生産拡大の余地は小さいのが現状だ。

 ジャガイモの国内出荷量の8割を占める北海道では、ジャガイモの作付面積が減り続けるなど、農家の人手不足も安定調達に影響する懸念が強まっている。北海道のジャガイモ作付面積は6年前に比べて約1割減った。同1.5%増えたタマネギとは対照的だ。

 北海道ではジャガイモの作付け作業が始まり、地元では例年並みの収穫量を期待しているが、道内に住む50代のジャガイモ農家の表情は暗い。「菓子メーカーの需要に応えてたくさん収穫したいが、人手がとにかく足りない」。北海道では慢性的な人手不足に悩み、栽培する作物を周期的に変える「輪作」からジャガイモを外す生産者がじわり増えている。

 「ジャガイモの収穫作業は重労働だから」と、この農家はため息をつく。北海道農協畑作・青果対策本部によるとジャガイモ農家の1ヘクタール当たりの労働時間は小麦の約7倍と重労働という。高齢の農家が重労働を敬遠して作付けを減らすほか、新規就農する若者もなかなか増えない。

 防疫対策などで海外産ジャガイモをすぐに増やすのは難しい。作付面積の減少や人手不足といった構造的な問題が、ポテトチップスの安定生産に影響を与え続ける懸念が残る。

 (札幌支社 鷹巣有希、湯前宗太郎、柴田奈々)



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