真相深層 「実質0円」禁止販売店淘汰 スマホ低迷、キタ ムラ大量閉店接客・付加価値活路探る 2017/3/1 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合面にある「真相深層 「実質0円」禁止販売店淘汰 スマホ低迷、キタムラ大量閉店接客・付加価値活路探る」です。





 スマートフォン(スマホ)の「実質0円」規制の余波が携帯電話の販売代理店に押し寄せている。スマホ販売の低迷を引き金に写真プリント大手のキタムラが大量閉店を決めた。家電量販店も販売数が減り、第2のキタムラとなることを警戒する。スマホを並べれば売れる時代が終わり、実質0円頼みからの脱却を迫られている。

 「もう価格では差をつけにくい」。カメラのキタムラ東京・日本橋店。大手携帯3社のスマホなど約50機種が並ぶ中で、本田直人店長は販売の変化を肌で感じている。

 以前は現金還元(キャッシュバック)を厚くし、競合店より低価格で販売台数を積み上げた。本田店長によると3~4年前の「バブル状態」が2年前に頭打ちになり、昨春からさらに落ち込んだ。契約プランやキャンペーンは日々更新されて複雑になる。「覚えるので精いっぱい。来店客に対応しきれず、販売機会を逃がすことが増えた」

上場来初の赤字

 キタムラは2018年3月末までに全体の約1割にあたる129店の閉鎖に踏み切る。これで17年3月期に13億円の特別損失を計上し、連結最終損益は24億円の赤字(前期は7000万円の黒字)と01年の上場以来初めて赤字に転落する。

 背中を押したのはスマホを「実質0円」で売る過剰な値引きを禁じた16年4月の総務省指針だ。約450店で扱うスマホの販売が「期初の見込み以上に大きく落ち込んだ」(菅原孝行取締役)。

 キタムラはこれまでも時代の変化にさらされてきた。デジタルカメラの普及で、本業のDPE(写真焼き付けなど)市場が縮小。対策として注力したデジカメ販売も高性能カメラ付きスマホに押される。スマホ販売に活路を見いだし、11年から取扱店を急速に広げた。

 もともと綻びはあった。カメラ、プリント、スマホを一緒に売る販売員の負担が増えた。複数社のプランに精通する人材が求められる。16年3月期の売上高人件費率は12.2%と2年連続で上昇した。菅原取締役は「専門性が高いスマホを片手間で扱うのは難しく、接客が弱くなっていた」と誤算を認める。0円規制で頻繁に大手の間で乗り換える動きも鈍った。

家電店でも陰り

 店の「顔」となる1階の売り場をスマホで飾ってきた家電量販店にも逆風が吹いている。ビックカメラの16年8月期連結決算は携帯電話の売上高が前の期に比べて0.8%減った。エディオンも16年4~12月の携帯販売が前年同期比14%減。久保允誉会長兼社長は「付加価値をつけなければならない」とネット接続サービスなどと組み合わせて規制の影響を抑えたい考えだ。

 大手携帯3社は代理店を新規契約数などで4~5段階にクラス分けし、販売奨励金の額を決めていた。クラスが変わると「派遣社員2人分の月給ぐらい変わる」(代理店幹部)。代理店はこれまで奨励金を原資に値引きをしかけたが、規制で過度なキャンペーンは打てなくなった。

 0円規制で格安スマホへの乗り換えも加速している。調査会社MM総研(東京・港)によると、16年の格安スマホ向け端末出荷は前年比89%増の266万台。大手3社向け出荷は同3%減の2676万台だった。格安スマホは利幅が薄く、ネット販売が多いことも代理店の収益に響く。

 危機感を抱く代理店は生き残りに必死だ。DPE大手のプラザクリエイトは約80店の販売店を持ち、16年4~9月の販売は5万8千台と前年同期比2割増。この期間に出した5店は全てソフトバンクの格安ブランド「ワイモバイル」だ。

 大島康広社長は「販売代理店の淘汰が進む今こそ好機」と接客や都心部の好立地、待ち時間をつぶせる写真プリントを強みに積極出店を続ける。7月にはスマホで撮った写真をTシャツなどに加工するサービスを広げ、収益源に育てる。

 キタムラも4月にモバイル事業部を立ち上げて、スマホの販売戦略をカメラと分離する。売り場に専任スタッフを置き、格安スマホの取扱店を増やす。アクセサリー販売やデータ移行など付加サービスも強化し、立て直しを急ぐ。

 実質0円の狂騒が終わり、販売代理店は戦国時代に入った。

(小川知世、大西綾、花田亮輔)



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