真相深層 「隠れた税優遇」普及へ機運 確定拠出年金、主婦らも対象に 法改正、金融機関も動く 2016/06/01 本日の日本経済新聞より

今日の日経注目記事は、日本経済新聞の総合1面にある「真相深層 「隠れた税優遇」普及へ機運 確定拠出年金、主婦らも対象に 法改正、金融機関も動く」です。





 個人が掛け金を積み立てて運用し、結果次第で年金額が決まる個人型確定拠出年金(DC)。現在は企業年金のない会社員や自営業者しか加入できないが、24日の改正法成立で来年から公務員や主婦などにも広がり、原則的にすべての現役世代が対象になる。節税効果が非常に大きいのに従来ほとんど使われず「隠れた投資優遇税制」と呼ばれてきた確定拠出年金の転機になるのか。

個人型DCへの関心は高まっている(ファイナンシャルプランナーによる都内でのセミナー)

 「SBI証券の個人型DCへ乗り換えるか検討しています」。ここ1カ月、取材した若い会社員の何人かからそんな声を聞いた。同社が4月下旬、株式など主要資産で投信の保有コスト(信託報酬)が最低水準のものを導入したためだ。「法改正を機に個人型DCで存在感を高めたい」(SBIベネフィット・システムズの上田剛司取締役)

 すでに低コスト投信が多いりそな銀行も、来年を見据えて品ぞろえをさらに強化する。大手ネット証券や独立系投信会社も個人型DCへの参入を水面下で検討中だ。

 個人型DCの導入は2001年。自分で銀行、証券、保険など金融機関に申し込む。最大の利点は掛け金の全額が所得税・住民税の対象から除外される節税効果だ。

加入わずか0.6%

 所得500万円の会社員(上限税率30%)が掛け金の上限年27万6000円を拠出すると、年に30%分の税金8万2800円が減る。運用期間中の運用益も非課税で原則60歳からの受け取り開始後も優遇税制が適用される。老後資金作りに最優先で選択したい制度だ。

 しかし利用は低調。現在の対象である企業年金のない会社員は会社員の約6割を占め、自営業者を合わせると4100万人前後が使える。しかし加入者は26万人とわずか0.6%にすぎない。

 制度がほとんど知られていないのが原因。責任を名指しされてきたのが金融機関と、制度の実務を任されている国民年金基金連合会の2つだ。

 「個人型DCって何ですか?」。金融機関の店頭で尋ねると、逆に聞き返されることもある。職員にすら教えないほど大半の金融機関はやる気がない。個人型DCでは投信の販売手数料は通常とれないし、残高も毎月数万円程度しか積み上がらない。「手数料の厚い投資信託を一気に数百万円買ってもらう方がいい」(大手金融機関)

 一方の国民年金基金連合会。もともと自営業者向けの確定利回り商品である国民年金基金が業務の主軸。「後から業務に加わったDCに熱心ではない」と関係者が口をそろえる。連合会のサイトのトップページの大半は国年基金の紹介だ。

 しかし法改正を機に変化の兆しがある。まず金融機関。冒頭のSBIやりそなのほかにも「公務員は所得も高く税制優遇にも敏感。今後営業をかけたい」(地方銀行)などの声が出ている。「知名度が上がり資産が積み上がればビジネスになる。ダイレクトメールで加入を促す」(証券会社)

 国民年金基金連合会も「今後シンポジウム開催やホームページの充実などで制度の周知を急ぐ」とようやく改革に動く。

コスト差に注意

 ただし金融機関は玉石混交。多くは個人型DCの管理手数料が高く、投信の信託報酬も割高。金融機関の違いによる総コスト差は、例えば30年加入で数百万円に達しかねない。現在、管理手数料が低いのはSBI証券やスルガ銀行。低コスト投信の品ぞろえが多いのはSBI証券、りそな銀行、野村証券などだ。

 厚生労働省の財政検証では、現役世代の平均収入に対する厚生年金や国民年金の比率(所得代替率)は40年代前半には今より2割減る。今回の法改正の意味は、財政難の公的年金を補う柱の一つに国が個人型DCを明確に位置づけたということだ。厚生労働省は「個人型DCという名称の堅さも広がらない原因」として近く愛称づくりに乗り出す。

 米国にも個人型DCに似た個人退職勘定(IRA)という仕組みがある。1974年の創設後しばらく普及せず、81年に加入者を原則全勤労者に広げてから普及が進んだ。今では老後資金の重要な柱だ。35年遅れたが、日本も今回の法改正が普及の契機になりそうだ。

(編集委員 田村正之)



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